京急の三浦半島「延伸計画」 2016年“凍結”も、鵜呑みにしていいのか? 一部で囁かれる巧みな戦術説
延伸計画の“凍結”
京浜急行電鉄は京急久里浜線の延伸計画、つまり同線の最南端にある終着点・三崎口駅(神奈川県三浦市北東部)のさらに南に線路を延ばす構想を悲願として来たが、2016年に突然“凍結”してしまった。
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ところが、ある業界関係者は
「この大英断で行政側を困惑させ、『延伸計画を復活してください』と相手側にお願いさせ、『そこまでいうなら』と有利な条件で計画を再開するための、実に巧妙な戦術では」
と深読みする。
延伸路線は、当初三崎口駅から半島南端の三浦市の旧市街で中心部でもある三崎港地区までの約4kmの区間だった。途中に「油壷駅」(仮称)を設け、ペンギンで人気の「京急油壷マリンパーク」(老朽化で2021年閉園)や、周辺に散在するマリーナやキャンプ場、別荘に対する便利な交通アクセスとして。さらには、同社が同計画と両輪の片方として進める沿線でのニュータウンの「玄関口」としても位置付けた。
東京都心までは60分程度で横浜、羽田空港へのアクセスもいいことを前面に出し、ハイグレードな住宅地をウリにする作戦だ。もちろん同社の歴史上最大級の沿線開発で、今後激しさを増すライバル鉄道会社との沿線間競争に競り勝つための「強力アイテム」でもある。
首都圏屈指のリゾート基地
「陸の孤島」である三崎港までの交通の便の悪さは、目下三浦半島全体の観光産業にとっての最大課題で、高い知名度の割にその価値を最大限に生かし切れていない、との指摘をよく耳にする。
最寄りの三崎口駅までの約4kmを路線バスが連絡し、平日なら20分程度でつなぐが、休日や夏休み、年末年始は状況が一変し1時間以上はざらになる。行楽目的のマイカーが大挙して押し寄せるからで、三方が海の半島は外界との連絡路が限定されるという宿命なのである程度仕方がない。ただし交通渋滞は住民生活にも支障が出ており、延伸路線の早期完成を望む市民も少なくない。
路線延伸で観光客のさらなる増加も望め、仮に羽田空港と直結の全席指定の「特急ライナー」を走らせれば、インバウンド(訪日外国人)の誘致も相当期待できる。コロナ禍直線の2019年における同市の年間観光客数は600万人以上だが、一説には延伸計画の完成で
「年間1000万人」
も夢ではないとの推測もある。
東京・横浜へのアクセスが抜群で、沿線の魅力が高まれば自然と移住者も増え、人口増で市内の経済も活発になり、就業の場も拡大し、税収も右肩上がりで市の財政も潤う――まさに自治体が夢見る好循環である。
観光資源もてんこ盛りで、温暖な気候ときれいな海、城ヶ島などの景勝地、鎌倉・逗子・葉山といった全国区のセレブな街。肥沃(ひよく)な丘陵地で収穫される三浦野菜、日本屈指のマグロ水揚げ基地・三崎港など枚挙のいとまがなく、
「首都圏屈指のリゾート基地」
といっても過言ではない。