東京~成田が20分台に? コロナにあえぐ京成電鉄の“時速200km”逆転シナリオをご存じか
“ドル箱”スカイライナーが閑古鳥
京成電鉄(千葉県市川市)が2020年度、2021年度の2年連続赤字にあえいでいる。コロナ対応で世の中が「リモート」の合言葉のもと、国民が一斉に不要不急の外出を手控えた結果、列車内はガラガラとなり、鉄道会社の経営を直撃したのは周知のとおりだ。京成の場合はこれに加え、インバウンド(訪日外国人)を事実上入国させない「令和の鎖国政策」が経営難に拍車をかけた。
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同社には、他社がうらやむドル箱路線「京成スカイライナー(SKL)」がある。東京都心~成田空港を直結する全席指定の特急電車で、まさに「京成の顔」。ところが、政府が進めるコロナの水際対策でインバウンドの日本上陸を事実上シャットアウトした結果、インバウンドの利用割合が極めて高い成田は閑古鳥が鳴く状況に陥り、SKLも連日「空気を運ぶ状況」となった。果たして、業績を回復させて“安定飛行経営”へと移行する処方箋はあるのだろうか。
在来線でトップクラスの速さを誇るSKL
京成は、JR山手線日暮里駅~成田空港(空港第2ビル駅)を最短36分で結ぶSKLを筆頭に、アクセス特急(同路線を走る普通運賃の電車)、京成本線を走る同じく普通運賃の快速特急などを加えた、都心~成田のいわゆる成田空港アクセス線が収益の大黒柱で、営業収益全体の実に3割を占める。
ちなみにSKLが走る京成成田空港線(スカイアクセス線)は、京成本線の京成高砂駅(葛飾区)から分岐し、千葉県の松戸市や鎌ヶ谷市、千葉ニュータウンなどを横切って成田に至る路線で、全長は約51km。高速運転を前提に建設しカーブも少なく、全線が連続立体交差で踏切は皆無だ。
そもそも京成の線路幅は新幹線と同じ1435mmの標準軌のため、JR在来線や東急電鉄の大半、東武鉄道、小田急電鉄など国内の大半の鉄道会社が採用する同1067mmの狭軌よりも幅が広いく、列車は安定してスピードが出しやすい。その結果、SKLは最高営業時速160kmと、国内在来線のなかでもトップクラスの速さを誇る。
SKLにとっての富の源泉である成田は、政府が2016年に掲げた観光ビジョン(2020年度にインバウンド4000万人、30年度に同6000万人)を追い風に飛翔を続け、コロナ前の2019年の空港旅客数は過去最高の約4434万人(外国人約3670万人、日本人約764万人)を果たした。だが、コロナで事態は一変。2021年は約524万人(同189万人、約335万人)と失速し、外国人に至っては前年比約85%減という、歴史的な負の数値を記録せざるを得なかった。
翻って成田国際空港株式会社(NAA)が調べた、2018年度の出発旅客のアクセス交通等実態調査によると、鉄道が全体の約47%を占め、
・バス(約35%)
・自家用車(約13%)
を大きく引き離している。また鉄道の内訳を見ると、京成が28%(SKL13%、他の成田スカイアクセス線6%。京成本線9%)で、JR東日本の19%(成田エクスプレス/NEX14%、他のJR線5%)に大差をつけている。ところが、成田の旅客数激減でこうした京成の優位性が一転、アキレス腱(けん)になってしまった。