ローカル線再編へ改正法成立も 自治体「地方切り捨て」「乱暴すぎ」と不満爆発、JRの安堵だけが空しく響く
国主導の再構築協議会制度創設
ローカル線の再編を促す、改正地域公共交通活性化再生法が国会で成立した。JR側は国が再編協議の行司役を務めることを歓迎しているが、沿線の地方自治体は警戒感を隠さない。
岡山県の北西端部に位置する新見市のJR新見駅を1両編成のワンマン列車が走りだす。平日昼過ぎの便だからか、乗車したのは大きな荷物を抱えた高齢の女性ひとりだけ。列車は高梁(たかはし)川に沿って市中心部を走ったあと、広島県庄原市の備後落合駅に向かって中国山地に飲み込まれていった。
中国山地を東西に貫くJR芸備線。鉄道路線としては新見市の備中神代駅から広島市の広島駅までの159.1kmだが、岡山県側の列車はすべて新見駅を起点に運行されている。全線非電化の単線で、新見駅を出発する列車は1日5本しかない。
「こんなダイヤでは使いようがない」
駅前の飲食店で来店客(69歳)に話を聞くと、不満の声が返ってきた。
改正法成立で再編促す JR芸備線の未来は
沿線は急激な人口減少にさらされている。その結果、1km当たりの1日平均輸送人員を示す輸送密度は2021年度、広島市周辺を除いて1000人を下回り、備中神代駅から庄原市の備後庄原駅間は100人に満たない。JR西日本管内では最も利用者が少ない路線のひとつに数えられる。
沿線地方自治体とJR西日本は利用促進策の話し合いを続けていたが、JR西日本が存廃も含めた将来のあり方検討を求めたことに自治体が反発し、2022年から協議が進まなくなっている。
そんな芸備線の行方を左右しかねない動きが国会であった。利用者の減少で維持困難になったローカル線の再編を促す改正地域公共交通活性化再生法が成立したことだ。
改正法は半年以内に施行されるが、国が主導する再構築協議会制度の創設が柱になる。協議が進まないときなどに、自治体と鉄道事業者が国へ設置を要請でき、国土交通相が必要と認めれば協議会が設けられる制度だ。自治体と鉄道事業者は正当な理由がない限り、協議に応じなければならない。
その席上で自治体と鉄道事業者が鉄道の存続策やバス、バス高速輸送システム(BRT)への転換など今後の対応を決める。結論が出れば、国土交通省が補助金で方針の実現を後押しする仕組みだ。