北陸鉄道「石川線」「浅野川線」上下分離検討へ 古都・金沢で起きた路線維持の大ピンチ、地元協議会はバス転換視野も そうは問屋が卸さない現実とは
パブリックコメントに路線維持望む声
赤字が続く石川県の北陸鉄道石川線と浅野川線で、上下分離方式導入の検討が始まることになった。観光で人気の金沢市でさえ鉄路を維持できない事態は衝撃だ。
「人口減少や高齢化という社会課題の解決に石川線、浅野川線をどう生かすか、考えるべきだ」
「便益がありながら採算の合わない事業こそ地方自治体が実施すべき政策でないか」
金沢市など石川県の中央都市圏6市町が募集したパブリックコメントで、北陸鉄道の石川線、浅野川線維持を求める声が相次いで提出された。
パブリックコメントは、石川県と中央都市圏6市町、交通事業者などが参加する石川中央都市圏地域公共交通協議会がまとめた2023年度から5年間の地域公共交通計画案に寄せられた。
計画案には赤字が続く石川線と浅野川線の持続可能性確保が盛り込まれている。全体で112件の意見が届いたなか、石川線、浅野川線関連が52件を占めた。
石川線と浅野川線を運行する北陸鉄道は、コロナ禍で大打撃を受けた。2022年の協議会でもはや単独で路線を維持できないとして、線路や駅舎など施設を自治体が維持管理し、北陸鉄道が運行に専念する上下分離方式の導入を金沢市などに求めている。
首都圏の観光客急増もなぜ
石川線と浅野川線は過疎地域を走っているわけではない。人口約45万人の金沢市と近郊を結ぶ路線で、大半が金沢市内を走っている。
金沢市は2015年の北陸新幹線延伸以来、首都圏からの観光客が急増し、“元気がある地方都市”と考えられてきた。そんな金沢市の鉄道が経営危機を迎えたのは、外から見ると衝撃的だ。
協議会は2022年から計4回の会合を開き、北陸鉄道から詳しい経営状況の説明を受けるなど審議を重ねた。その結果、2023年2月末の第4回会合で上下分離方式導入について、2023年度に一定の方向性を打ち出すことを決めた。
上下分離方式は欧州で一般的な公共交通の仕組みで、日本では2007(平成19)年の地域公共交通活性化再生法施行後、
・若桜鉄道(鳥取県)
・青い森鉄道(青森県)
・福井鉄道(福井県)
など導入例が徐々に増えている。自治体の持ち出しは大きいが、鉄道会社の負担は大幅に軽減される。
金沢市交通政策課は
「上下分離方式を導入した場合、各自治体からどれだけの持ち出しが必要になるかなどを精査したうえで、沿線市町と協議したい」
と述べた。馳浩石川県知事は2月末の県議会で自民党会派の代表質問に答え
「北陸鉄道が考えられる選択肢の費用対効果を分析し、関係市町が具体的な数字を基に議論することが重要だ」
との見解を示している。