ローカル線再編へ改正法成立も 自治体「地方切り捨て」「乱暴すぎ」と不満爆発、JRの安堵だけが空しく響く
地方はローカル線切り捨てを危惧

これに対し、沿線住民や自治体は警戒感を隠さない。新見市の年金生活者(75歳)は
「再構築協議会の開催が地方切り捨ての口実に使われるのではないか」
と不安を口にする。岡山県県民生活交通課は
「細かい運用が明らかにされず、まだ何ともいえないが、住民の不安はよく分かる」
と語った。広島県地域政策局は、
「国鉄民営化の際、大都市圏の収益でローカル線を維持する仕組みになっていたはず。運行会社の都合で存廃論議が進むのは納得しにくい。持続可能な公共交通を構築するのは国の責任だ」
と不満を訴えた。
愛媛県の中村時広知事は記者会見で「(国鉄を)個々に分割してしまったなかで『はい、あなたたち考えなさい』というのは乱暴すぎる」
と述べ、JR各社のあり方自体に議論が必要との見解を示している。
地方のローカル線再編、国の役割は

地方ではこれまで、多くのローカル線が地元の反対を押し切って廃止されてきた。人口減少の進行や国の財政難を考えれば、やむを得ない一面もあるが、公共交通の弱体化が地方の疲弊を進行させていることへの不満がくすぶっている。
斉藤鉄夫国交相は記者会見で
「(国が)中立的な立場で会議を主催し、廃止や存続のいずれも前提にせずに自治体と鉄道事業者の連携と協働を促す」
と説明している。あくまで行司役に徹する考えを示したわけだが、議論が進むなかで自治体の意向を無視して廃止に追い込まれることがないといい切れるのだろうか。
しかも、そこには
・国鉄分割の妥当性
・当時の鉄道ネットワーク維持の精神
を検証・総括し、幹線以外も含めた鉄道ネットワークのあり方を整理する考えが見当たらない。区間別の輸送密度や営業収益だけで将来像を決めるとなると、
・自治体に負担増
・バス転換
の二者択一を迫ることになりかねない。
国交省が本当に中立的な立場でローカル線の再編を進めるのであれば、地方の疑念を振り払える運用方針だけでなく、過去の検証結果と新たな交通ネットワークのあり方を示す必要がありそうだ。