自動車メーカーも注目 「大学発ベンチャー」はなぜ優れた最新技術を生み出し続けるのか

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高い技術力を誇る大学発ベンチャーは年々増加傾向にあり、経済産業省による2021年度調査では3306社も存在することが確認されている。

優れた最新技術を生み出せる理由

年々増加傾向にある「大学発ベンチャー数の推移」グラフ(画像:経済産業省)
年々増加傾向にある「大学発ベンチャー数の推移」グラフ(画像:経済産業省)

 まず大学発ベンチャーが活躍している背景として、大企業の研究開発費が削減され、

・リスクの高い先端的研究が大学で多く行われるようになった
・大学側も自前の収益の確保を余儀なくされている

ことなどが挙げられる。

 また、大学発ベンチャーが優れた最新技術を生み出している理由のひとつには、大学との関係を生かして、

「大学が行った最先端的な研究資源を十分に活用できる」

という点がある。大学ベンチャーは大学との強い結びつきがあるため、大学教授などの知識や、充実した研究施設を活用できる。一般的なベンチャー企業に比べ、技術的な優位性を保っている。

 大学ベンチャーが持つほかのメリットとしては、多くの著名な大学教授とのコネクションだ。大学教授のネームバリューを使い、他企業や大学と連携することができるようになる。

 さらに大学教授はさまざまな学会や大会などへの参加で人脈も広く、最新の研究動向に関する知識も豊富。そのため大学発ベンチャーはそれらを活用して、他部門の人材や知識を自社に取り入れることも可能になるのだ。

 極めつけは、大学発ベンチャーに博士人材が多い点だろう。経済産業省の調べでも、大学発ベンチャー企業の従業員に占める“博士人材の比率”は一般企業の研究職に比べて高く、博士人材が積極的に活用されていることが判明している。実際に「従業員総数における博士人材の割合」のデータを見てみると、一般企業研究職が「4%」なのに対し、大学発ベンチャーは「16%」だった。

 こういった理由で、優れた技術開発力を持つ大学発ベンチャーには、国内企業も注目している。物流関連の企業に配送ルートの改善を提案する名古屋大学発の「オプティマインド」にはトヨタ自動車や三菱商事などが出資。東京大学発の「先進モビリティ」は損害保険ジャパンと三菱オートリースとともに、「自動運転車の導入を支援するソリューション」を共同開発し、発売に至っている。

 大学発ベンチャーは大学との強いつながりや博士人材の確保を背景に、最新技術を生み出し続け、実用化への道筋をつけているのだ。

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