「お客様は神様ではない」 秋田のバス会社“クレーマー反論広告”に見る、カスハラ被害の深刻さ 暴言は拳よりもタチが悪い
約半数がカスハラ被害に

秋田県能代市で路線バスやタクシーを運行する第一観光バスは3月中旬、「お客様は神様ではありません」という意見広告を地元紙に掲載した。
これは、乗客からの理不尽な要求に対して乗車拒否もありえるとするものだ。広告はツイッターで拡散され、大いに話題になった。以下、文言を引用する。
『その苦情、行き過ぎじゃありませんか?』
(カスタマーハラスメントについて)
近年、些細なことで理不尽なクレームや過度な要求をするお客様がおられます。確かに、当方に非があり、お詫びする場合もありますが、車内外のドライブレコーダーで確認し、非がないことをお伝えしても一方的に攻撃されます。
バスやタクシーの運転手は、一般の方が朝食を食べている時間帯からもうハンドルを握っており、オペレーターは電話の受付業務をしています。そうして子供たちの通学、高齢者の通院・買い物など、地域の足となって交通を担っています。
弊社はご利用者様に安全な移動を提供するとともに、社員を守ることも大切だと思っています。お客様と社員は対等の立場であるべきで、お客様は神様ではありません。今後、理不尽なクレームや要求には、毅然とした対応を取り、場合によっては乗車をお断りいたします。
これからも公共交通機関としての使命を果たしてまいりますが、弊社の考えもご理解いただけますようお願い申しあげます。
消費者や顧客からの著しい迷惑行為は、近年
「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」
と呼ばれ、問題視されている。
この言葉が使われるようになったのは2018年頃からだ。今回の広告が話題になった背景には、交通事業者に対するカスハラが、もはや業務に支障をきたすほどのレベルとなっていることがある。
事実、近年になって交通事業者に対するカスハラは増加の傾向にあるようだ。
交通・物流業界の労働組合からなる全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)が2021年11月に公表した調査結果(対象組合員2万908人)によると、回答者の
「46.6%」
が、なんらかの形で乗客からカスハラを受けたことがあると回答している。