自動車メーカーも注目 「大学発ベンチャー」はなぜ優れた最新技術を生み出し続けるのか

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高い技術力を誇る大学発ベンチャーは年々増加傾向にあり、経済産業省による2021年度調査では3306社も存在することが確認されている。

国内初となる実証実験も

KDDI、アイサンテクノロジー、ティアフォーは公道での「レベル4(無人運転)自動運転」に成功(画像:KDDI)
KDDI、アイサンテクノロジー、ティアフォーは公道での「レベル4(無人運転)自動運転」に成功(画像:KDDI)

 では実際に、大学発ベンチャーはどういう最新技術を生み出しているのか実例を紹介しよう。先ほども軽く触れたが、自動運転分野を代表する「ティアフォー」は名古屋大学発のベンチャーとして2015年に設立されている。

 ティアフォー創業時、名古屋大学の准教授だったという現・最高技術責任者(CTO)の加藤氏。研究の一環として、自動運転ソフト「Autoware」を開発し公開したところ、大きな反響があったため事業化を決意した。

 Autowareの役割は、自動運転に必要な装置やシステムを効率的につなぐこと。いわば人間の“頭脳”であり、自動運転にはなくてはならない最重要技術のひとつとなる。そして2017年12月14日には、愛知県幸田町で国内初となる、一般公道で無人の自動運転実証を成功させ話題となった。

 競合企業の多くは、多額の資金を投じてソフトウエアを自前で開発している。基本ソフトは自動運転のコア技術だけに門外不出のブラックボックスなのだ。これに対し、Autowareはオープンソースで無料公開されている。Autowareを導入した企業は同ソフトを土台として、追加の機能や車載装置を開発し、ビジネスをおこなえるのだ。

 一方ティアフォーは、各社の開発の過程で得られたデータを共有してもらうことで、ソフトの不具合の発見や修正などが容易になり、基本ソフトをさらに進化させることができる。こうした開かれた仕組みにより開発のスピードは格段に速くなるのだ。大学生ならではの自由な発想と、大学の研究力がなした成果と言えるだろう。

 ほかに、電気自動車(EV)の分野で活躍する大学発ベンチャーもある。「ジーエルエム」は2010年、当時京都大学大学院に在籍していた小間裕康氏が設立した。主に完成車事業とプラットホーム事業を展開。完成車事業では、スポーツEV「トミーカイラZZ」や次世代EVスーパーカー「ジーエルエム G4」を販売し、プラットホーム事業では、ジーエルエムの開発プラットホームを使い、EV製作のノウハウを提供している。

 さらに、慶応義塾大学発ベンチャーの「イーグル」もモビリティ分野で活躍する企業だ。ウェブサイトの事業内容には

・電気自動車と再生可能エネルギー及びスマートエネルギーの研究開発及び普及
・電気自動車用インホイールモーターその他電気自動車用基幹技術の研究及び開発

などが挙げられている。

 2019年6月には襄陽中車電機技術有限公司と、イーグルの中国法人である上海翼科新能源汽車科技有限公司が提携を発表。両社は自動車メーカー向けに、インホイールモーターの生産と販売をおこなうプロジェクトをスタートさせた。

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