松本市「路線バス」が4月公設民営へ なぜ負担増までして赤字路線を死守するのか?
長野県松本市を走る路線バスが4月1日、公設民営に移行する。行政の関与と負担を増やして路線を維持するわけで、人口減少時代の公共交通のあり方に一石を投じそうだ。
アルピコ交通はコロナ禍で大打撃

松本市は人口約23万6000人。県庁所在地ではないが、長野県南部の中核都市と位置づけられている。北アルプスや国宝の松本城など観光地に恵まれ、若い世代の移住先としても人気が高い。市内の公共交通は鉄道のJR東日本篠ノ井線、大糸線、アルピコ交通上高地線と路線バス、コミュニティーバスが担っている。
このうち、アルピコ交通のバス路線は利用者が年々減少し、減便が続いてきた。松本市によると、コロナ禍前の2019年度で大久保工場団地線など一部を除いて赤字が続き、鹿教湯温泉線など、収支率50%を切る路線も少なくない。利用者減で減便し、さらに利用者が減る悪循環が続いているわけだ。
アルピコ交通は高速バスや貸し切りバスの利益で路線バスや鉄道の赤字を埋め合わせてきたが、コロナ禍で高速バスの運休が相次ぐなどしてめどが立たなくなった。このため、2020年、松本市に公的支援を要請した。
アルピコ交通を傘下に収めるアルピコホールディングスの2022年3月期連結決算は6億4300万円の最終赤字。最終赤字はこれで3期連続になる。アルピコ交通は
「グループ全体で構造改革を進めているが、自助努力は限界」
と苦しい胸の内を明らかにした。