松本市「路線バス」が4月公設民営へ なぜ負担増までして赤字路線を死守するのか?
移行は4月1日から

長野県松本市を走る路線バスが4月1日、公設民営に移行する。行政の関与と負担を増やして路線を維持するわけで、人口減少時代の公共交通のあり方に一石を投じそうだ。特産の真っ赤なリンゴのなかに路線バスの姿。その横に「ぐるっとまつもと」の愛称が緑と黒の文字で記されている。
4月1日から公設民営で再スタートを切る長野県松本市の路線バス。運行するバスの車両や停留所に活用されるロゴマークが、市内各地で見られるようになってきた。
このロゴマークと愛称は一般公募で選ばれた。家族旅行で松本市を訪れ、親しみを感じた大阪市の会社員(30歳)の作品だ。
ロゴマーク入りのバス停は、松本市の委託を受けた業者が市南部の村井町など周辺部から中心部に向けて設置を進めている。
松本市が運行路線を再編

松本市と近郊の朝日村、山形村ではこれまで、アルピコ交通(長野県松本市)の路線バスやコミュニティーバスなど5事業者がバラバラに運行していた。松本市は民間の赤字路線に補てん金を出し、民間が撤退した路線に市営バスを走らせて公共交通の維持に努めている。
しかし、4月からは松本市が路線全体を再編し、運賃や運行本数を決定する。路線バス全体の運行主体が松本市に変わるわけだ。バス停と路線名を統一したうえで、9月まで従来通り各社が運行するが、10月からは入札で運行事業者を特定の1社に決め、5年間委託する。
4月からの運行計画では、朝日・波田線など5路線を新設し、並柳団地線など12路線のルートなどを変更する。信大横田循環線など6路線は需要に合わせて増減便をして、稲核線など3路線は他の路線と統合して廃止に。浅間線など19路線は現状を維持する。通勤通学時間帯の増便や重複するルートの統合、空白地帯の解消にポイントを置いた再編だ。
公設民営後は事前に決めた負担金を松本市が運行事業者に支払い、運行実績による損益を双方で分け合う。4~9月の負担金は約1億2000万円。燃料費高騰の影響もあり、前年同期に比べ、松本市の負担は
「5割」
ほど増える。
松本市は2020年に初当選した臥雲義尚(がうん よしなお)市長が選挙公約に路線バスの公設民営化を掲げていたこともあり、持ち出しの増加を覚悟して公共交通の維持へ動いた。松本市公共交通課は
「利用者減と減便が続く負のスパイラルに歯止めをかけ、持続可能な公共交通にしたい」
と力を込める。