片道1万8000円! 豪華夜行バス「ドリームスリーパー」はなぜ週末しか運行しないのか
運転は金土日のみ

豪華な夜行高速バス、ドリームスリーパーをご存じだろうか。同バスは池袋駅から新宿を経由して、大阪駅まで走る。室内は通路を挟んで「1-1」の2列で、個室が11。トイレとは別にパウダールームもある。価格は大人片道1万8000円で、新幹線の普通車指定席よりも割高だ。
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また、運転は金土日のみで、運営元の関東バス(東京都中野区)も車両を1台しか所有していない。
コロナ禍以前、東京~大阪間における1日当たりの東海道新幹線の輸送量は35万人以上で、そこへJALやANAなどの国内便や夜行高速バスが運行され、旅客流動は活発だった。そのため、ドリームスリーパーは片道運賃が1万8000円でも、確実な需要を見込める。
それにもかかわらず、ドリームスリーパーが金土日にしか運転されない理由について、今回述べたい。
ハイグレードな個室バスの誕生

ドリームスリーパーは現在、関東バスが金土日に単独で運行しているが、コロナ禍以前は、中国バス(広島県福山市)が東京~福山・広島間でも運行していた。ちなみに、ドリームスリーパーという名称の由来は
「乗客に最高の眠りと上質なリラクゼーションをお届けする快眠バス」
というコンセプトからだ。
ドリームスリーパーの前身は、中国バスが広島~横浜間で運行していた夜行高速バス「メイプルハーバー」だ。転機が訪れたのは、2012(平成24)年だった。
メイプルハーバーの続行便に、韓国のヒュンダイ製の新型車両が投入された。車内は通路を挟んで1-1の2列の座席配置になった。このようなバスは台湾で一般的だったが、当時の日本では珍しい豪華な車両だった。
日本よりも早く、台湾では1990年代中頃にバス業界の規制緩和が実施され、値下げ競争ではなく、各事業者が車内の居住性を向上させる方向へ向かった。結果、通路を挟んで1-1の2列の座席配置のバスが一般的になるなど、バスのサービス水準が世界一高い国となった。
当時の日本の夜行高速バスは、
・1-1-1の独立3列
・2-2の4列
の座席配置のバスが一般的だったが、中国バスは通路を挟んで、1-1の2列の座席配置のバスを導入した。その後、ウィラーなどのバス事業者も1-1の2列の座席配置のバスを導入するなど、規制緩和後の日本も居住性向上を目指すなど、サービスの多様化が進んだ。決して、値下げ一辺倒ではなかったのだ。
肝心のドリームスリーパーだが、2017年1月18日から東京~大阪線を完全個室型の新型バスを使って、関東バスと両備バスの共同運行という形で新規に開設された。
東京~大阪間はドル箱区間のため、当然のことながら競合も多くなる。値下げ競争ばかり行えば、自社の経営体力をそぐことになるうえ、差別化を図る要素が「価格」しかなくなってしまう。
バス事業者から見れば、完全個室型の新型バスを投入すれば、客単価が上がるだけでなく、他社と完全に差別化が図れる。東京~大阪間で完全個室の超豪華な夜行高速バスを運行すれば、価格面で新幹線の普通車指定席より割高になっても新規需要の開拓ができ、またその思いが関東バスと両備バスにあった。池袋が起点となったのは、同地への需要が見込まれたからだ。