完全自動運転の「車いす」はなぜ普及しないのか? 高齢化社会の重要ツールも、実用化に立ちふさがる問題点とそれ以上の可能性
少子高齢化が叫ばれる昨今、ワンボタンで目的地まで自動操縦してくれる車いすの完全自動運実用化が着々と進められている。今後の課題と懸念点はいかに。
空港でも稼働

モビリティ業界は現在、大変革を迎えている。特に注目されているのが自動運転であり、それは車いすの世界にまで浸透している。日本でも羽田や成田空港などで「自動運転モビリティ」として、2021年から運行サービスが始まっている。
WHILL(東京都品川区)が手がけ、成田空港で稼働する「WHILL自動運転モビリティサービス」(以下、WHILL)は、介助者なしの自動走行を実現した完全自動運転車いすの先駆けだ。
利用者がタッチパネルで行き先を押すだけで広い空港の中をスムーズに走り抜け、目的のゲートまで走行する。障害物なども事前に感知して避けられるだけでなく、エレベーターとも連携し、異なるフロアへの移動もできる。WHILLが近づくだけでエレベーターが停止し、扉を開閉し、エレベーターのパネルを押さずとも目的のフロアへ連れて行ってくれる。
また、中国の深センに本社を持つUBTECHが開発した「PathFynder」は、神奈川県で行われた生活支援ロボットの実証実験企画に採択されている。PathFynderは自動運転と運転アシスト機能を持つロボット車いすで、スマホ操作による自動運転で目的地に移動できる。自分で運転をする際、安全運転サポート機能により安心して移動できるようアシストされる。今回の実証実験は介護施設で行われ、ロボット車いすにより介護スタッフの業務削減につながるかが検証された。
実用化が検討されているのは、空港や介護施設だけではない。大型商業施設や病院などの大きな施設では既に実証実験も行われているのだ。
このような技術があるのにもかかわらず、完全自動運転車いすはなぜ主流になっていないのか。実は、問題はまだ多いのだ。