タクシー運転手の「飲酒運転」は撲滅されたのか? 予期せず検知器が鳴ってしまった、下戸ドライバーの悲劇とは

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タクシー業界の内情を知る現役ドライバーが、業界の課題や展望を赤裸々に語る。今回は、運転手の「飲酒」について。

酒が飲めない運転手を襲った意外な悲劇

 タクシー運転手が行う乗務前の「点呼時アルコール検査」では、呼気に含まれるアルコールを測定する。これが基準を上回ると測定器が「アルコールあり」と反応して異常音を発する。

 そうすると乗務できない。会社側は、担当の車を休車にしたくないから当人に牛乳を飲ませるなどして1時間後に再測定する。それでも駄目なら始末書を書かせて帰宅させている。

 酒気帯び運転の基準となる0.15mg/Lとは、どのくらいのアルコールなのか。

 例えば度数が5%の一般的な缶ビールは500mL。焼酎と日本酒の1合は180mL。こちらはビールより度数が高い。おおよその目安として、勤務前日は夕方の食事時の1杯か2杯程度が安全という認識だ。

 しかし、アルコール分が肝臓で分解される程度には当然個人差がある。全くアルコールを受け付けない人が、体質ゆえに痛い目を見ることもある。

 ついひと月ほど前のことだが、朝の点呼時に同僚のAさんが「自分の車の中に忘れていたアンパンがあるけど、誰か食べる人いるかい?」と言い出した。すぐさまUさんが手を挙げ「朝飯食べてないから、ちょうだいよ」となり、そのパンをパクリと食べた。

 何てことのない日常的なやり取りだが、その後Uさんがアルコール測定器に息を吹きかけたら、いきなりカンカンカンと異常音。Uさんは驚き大慌てで口うがいの再測定、無事に測定を通過した。

 パンの中の「あん」が発酵して反応したのかもしれない。「俺、一切酒が飲めないのに」と、Uさんはこの失敗にボヤいていた。

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