タクシー運転手の「飲酒運転」は撲滅されたのか? 予期せず検知器が鳴ってしまった、下戸ドライバーの悲劇とは
タクシー業界の内情を知る現役ドライバーが、業界の課題や展望を赤裸々に語る。今回は、運転手の「飲酒」について。
「ちょっとだけ」の代償はあまりに重い

男は定食を頼み、瓶ビールも頼んだ。出されたビールの大瓶をコップに注いで飲み、「ふー、うまい」とつぶやいた。筆者は口にこそ出さなかったが「おい、仕事中に何を酒なんて飲んでいるんだ」とわが事のように冷や汗をかいた。
もしこの後に事故でも起こしたら、酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される。さらには免許取り消しによってタクシーの仕事はできなくなるし、懲役も加算されるのと100万円以上の罰金もある。
考えただけでも恐ろしい。あのような不用意な行動に及ぶ同業者の存在と、まだ世間の目が今より甘かったとはいえ、声を掛けて直接注意しなかった当時の自分を責めたい。
なぜ勤務時間中に飲酒したくなるのか?
客待ちの時間が長いと、ふと酒に手を伸ばしてしまう運転手もいるようだ。
これも昔の話、バブル崩壊当時だったが、羽田空港での客待ちは1回で3時間も4時間も掛かることがあった。タクシー待機場のごみ箱をのぞくと、誰が捨てたか缶ビールの空き缶がいくつも放り込んであった。
車内で飲酒していた者がいたのではないか。日本の玄関口である羽田空港。そこでの少数の違法行為者によって、タクシー運転手全体の評判が下がってしまうことを嘆いた。
さすがに今は、タクシー会社の社内教育や車載カメラのチェック、東京タクシーセンターの見回りもあって、このような状況は改善されている。