JR西・九州「副業解禁」に見る事業構造の大転換 どうなる現業社員、「士族の商法」と揶揄の過去を超えられるか

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昨今相次ぐJR各社の副業解禁。その背景にはいったい何があるのか。

JR各社で相次ぐ動き

JR西日本の本社(画像:(C)Google)
JR西日本の本社(画像:(C)Google)

 JR各社で副業解禁の動きが相次いでいる。JRの副業といえば、筆者(弘中新一、鉄道ライター)は分割民営化時の多角経営の一環として実施された「しいたけ栽培」などを思い出すが、今回の動きとはだいぶ異なる。というのも、存在感を増しているグループ内、関連業種での労働を前提としているからだ。いったい、各社は副業解禁で何を目指しているのだろうか。

 JR各社で先鞭(せんべん)をつけたのは、8月に解禁を発表したJR西日本だ。同社は、9月から副業を可能とする「サブキャリア制度」を導入。月に最大8日を目安として、鉄道現場で働く社員はグループ内で、間接部門の社員はグループ外で副業を可能とした。同時に、資格取得などに取り組む社員が最長2年間休職できる制度も導入している。

 これに続いて、解禁を発表したのがJR九州だ。同社では11月から運転士や事務職など職種に関係なくグループ内43社に限って、JR九州での時間外労働を含め、1か月に60時間以内の勤務を認めている。

 副業解禁そのものは、政府が「働き方改革」のひとつとして打ち出した2018年頃から活発化し、さまざまな企業が導入している。当初、企業側が期待したのは、副業が本業を刺激することでイノベーションを生むことだ。そのため、あくまで

「本業の役に立つ」

ことが前提だった。一例をあげると、2017年に副業を認めた通信大手のソフトバンクの場合、NPO役員や俳優、コンサルタント、大学講師などの副業は認める一方、

・パン販売店
・コンビニエンスストア

で働くという申請は却下している。

 その後、2018年に厚生労働省が政府の方針を受けて「モデル就業規則」から副業・兼業の禁止項目を削除し、原則容認としたことから、人手不足を緩和する方法として、経済界では副業を認める動きが一段と活発化し現在に至ってる。

 結果、現在では副業を一部解禁している自治体もある。例えば、和歌山県有田市や青森県弘前市はミカンやリンゴの繁忙期に限って副業が認められている。また、長野県では「農業での生産活動」を副業として認めている。

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