JR西・九州「副業解禁」に見る事業構造の大転換 どうなる現業社員、「士族の商法」と揶揄の過去を超えられるか
昨今相次ぐJR各社の副業解禁。その背景にはいったい何があるのか。
「士族の商法」とやゆされた過去

JR2社が今回副業を解禁した背景には、本業へのイノベーションのさらに先、グループ内の副業拡大で
「本業を支える体制を強化する」
もくろみがある。
もともと、JR各社の経営多角化は分割民営化による会社発足当時から始まっていた。それは黒字化を目指すための手探りの事業だった。1988(昭和63)年時点で、JR7社が参入した事業は88業種。
・トンネル内でしめじを栽培する
・高架下の空きスペースでパソコン教室を開講する
・車両の廃品を再利用して家具を製造する
など、どれも「士族の商法」とやゆされ、短命に終わった。
当時JR東日本では、新潟県にある上越新幹線の車両基地に養殖池を整備して、スッポンの養殖を始めたが
「共食いで全滅」
し、撤退したことが少しばかり話題になった。
そうした失敗を乗り越えて、JRが経営の多角化に成功するきっかけとなったのが「駅ナカ」の整備だ。一等地にある主要駅の再開発で建設された駅ビルに企業のオフィスや商業施設を誘致したり、駅構内に衣料品店などの店舗を誘致したりする事業は、JR各社の最も成功した副業となった。いまだ本業の比重は高いものの、JR各社は鉄道以外の事業へと軸足を移している。とりわけ現在、各社がもっとも力を入れているのは不動産業だ。
JR西日本は、「ジェイグラン」ブランドでマンションを販売。サービス業も活発で、ホテルのほかデイサービス経営にも乗り出している。また、コンビニエンスストア「セブン―イレブン」や調剤薬局「ココカラファイン」、ヘアカット専門店「QBハウス」の経営など、参入している事業は拡大している。自社の所有物件である駅ビルに、こういった店舗を出店するのだから利ざやは大きい。