JR西・九州「副業解禁」に見る事業構造の大転換 どうなる現業社員、「士族の商法」と揶揄の過去を超えられるか
総合企業と化した鉄道会社

JR九州の動きも同様かつ、活発だ。
同社は福岡県福岡市の九州大学六本松キャンパス跡地の再開発に参画。約2万1000平方メートルの敷地にマンションの入る再開発ビルや老人ホームなどを建設、経営している。六本松キャンパス跡地の再開発は、最寄りにJR九州の駅がないにも拘わらず参入したことで話題になった。九州大学箱崎キャンパスでの開発も視野に入れており、新駅の建設も予定されている。
このほか、JR九州は分譲や賃貸マンションの物件も多数建設。さらにコンビニエンスストア「ファミリーマート」を経営。和食レストラン「うまや」など外食産業にも乗り出している。ホテル経営では営業エリアを飛び出し、JR新宿駅最寄りに「JR九州ホテル ブラッサム新宿」を経営しており、うまやは都内にも複数店舗がある。もはや鉄道会社というより、
「鉄道経営から出発した総合企業」
と表現したほうがいいかもしれない。
和歌山県御坊市を走る紀州鉄道は実質、不動産会社だが、鉄道会社であることが信頼につながるとして、赤字運営を続けている。本業と副業がそこまで逆転することはないにせよ、JR西日本もJR九州も副業が拡大するのは間違いない。なぜなら、人口減とともに路線収入の減少は今後も続くからだ。今回の両社の副業解禁は、将来のキャリア転換を図る意図が含まれている。
つまり経済界の動きにあわせたというより、将来は現業職を含め配置転換が必須となることを見据えた措置なのだ。ただ、JR各社では分割民営化の際、現業職を店舗などに配置転換させて労働問題にもなっている。そうした経験も踏まえて、
「ソフトランディングさせたい」
という意図もあるだろう。
副業部分が拡大することには不安も残る。本業をおろそかにはしないという大前提がどこまで維持できるのか――それが今後の課題だろう。