エアライン5社「共同運航」は本当に朗報か? 細る地域交通、今こそ再編を議論すべきだ
ANAとJAL、九州の地域航空会社3社が発表した共同運航(コードシェア)。そこには、限られた資源をどう使うべきなのかという現代社会の普遍的な問題が含まれている。
地域交通維持へ 枠組み超えた協力
ここまで、大手2社と地域航空会社がコードシェアするメリットについて述べたが、今回の提携の最大の目的は「地域航空網の維持」である。身もふたもないが、1社だけではどうしようもなくなったから協力しよう、ということなのだ。
複数の事業者が協力することで新たな交通体系を作るという発想は、MaaSにも通じる。MaaSとは車やバスなどの交通手段の枠組みを超え、サービスとして提供することで移動の選択肢を増やすというものだ。
地域交通には赤字でも路線を残してほしいという地域の強力な要望がある。たとえば2020年の7月豪雨で甚大な被害を受けたJR肥薩線。筆者の住む熊本では今、この復旧をどうするかが注目されている。
報道によると、復旧には200億円以上の費用が掛かるという。沿線住民がピーク時の1987(昭和62)年から8割減ったため、利用者は月に数人レベルだ。そのため、豪雨前もJR九州は9億円近い赤字を抱えており、ランニングコストも課題になっているという。
一方、地元自治体は1万4000人の署名を集めるとともに、自らの負担割合を全体の2.5%に抑えるなどの支援を国に求めている。
地域の事業者には自治体の資本が入っているケースも多く、無下にはできない。とはいえJRからすればたまったものではない、という本音もあるだろう。
これは国が補填(ほてん)するから問題ないという話でもない。国費負担とは将来世代が払うツケだからである。