日本ではなぜ「外国人トラックドライバー」が制限されているのか? 慢性的な人材不足に逆行、そんな業界に未来はあるのか
経済産業省の調査によると、2050年までに輸送・機械運転従事者は「14%」増加する。しかし同業界ではまとまった人数の外国人材を確保できていない。未来はあるのか。
イギリスの運輸業界で1年前に起きたこと
今から1年ほど前、コロナ禍でイギリスに住む人たちの生活は大きく変わり始めた。なぜなら、小売店や飲食店が機能しなくなるという事態に陥っていたのだ。
現地メディアは、スーパーマーケットから食品や日用品がなくなり、ガソリンスタンドからガソリンがなくなり、パブからビールがなくなったと報じた。このような事態を引き起こした背景には、新型コロナウイルス感染拡大のほか、イギリスの欧州連合(EU)離脱があるが、これらふたつの背景に共通するのが
「移民」
というキーワードだ。
もともとイギリスでは、主に東欧からの移民がトラックドライバーとして数多く活躍していた。しかし、ジョンソン前首相は、低賃金で生産性の低いEU圏からの移民に頼ることをやめるべきだとしてEU離脱を掲げ、2020年1月のEU離脱後は、渡英を目指す移民のビザ取得を厳格化するとともに、高い英語力を求めるなど、移民受け入れを制限する方向にかじを切った。
さらに、新型コロナウイルス感染拡大で母国に帰る移民が増えたこともあり、道路運送業の業界団体によると、イギリス国内でトラックドライバーが約10万人も不足するという事態に陥った。
この状況を受け、イギリス政府は急きょ、移民受け入れ厳格化という政府方針と矛盾する形で、短期的な外国人労働者の受け入れ緩和策を2021年9月と10月に相次いで発表し、トラック(重量物車両)の運転免許を保有するEU圏の移民を対象に、トラックドライバーを5000人、およそ半年弱の期間限定という形でイギリス国内に受け入れることを急ぎ決定した。