日本ではなぜ「外国人トラックドライバー」が制限されているのか? 慢性的な人材不足に逆行、そんな業界に未来はあるのか

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経済産業省の調査によると、2050年までに輸送・機械運転従事者は「14%」増加する。しかし同業界ではまとまった人数の外国人材を確保できていない。未来はあるのか。

外国人トラックドライバーの可能性

日本で働く外国人労働者のイメージ(画像:写真AC)
日本で働く外国人労働者のイメージ(画像:写真AC)

 前述のとおり、日本の運輸業界は、まとまった数の外国人トラックドライバーの活躍が見込めないのが現状だ。それはなぜか。在留資格の観点から、この業界で働く外国人材の状況を

1.「地位または身分にもとづく在留資格」
2.在留資格「技能実習」
3.在留資格「特定技能」

と整理したので、それぞれについて論じていきたい。

 まず前提について確認する。現在、日本国籍を所有しない人のうち、日本に中長期滞在する人は、ひとつの「在留資格」を必ず保有しなければならない。在留資格はおよそ30種類あり、それぞれの在留資格によって、活動に制限が設けられているのが一般的だ。以下、1~3それぞれの在留資格に分けて現状の確認を進める。

1.永住や定住など、地位または身分にもとづく在留資格の外国人材の活躍
 およそ30種類ある在留資格のなかで、「活動内容」ではなく「身分」にもとづいた在留資格が四つある。これらの在留資格には大きな特徴があり、原則的に、就労に関する制限がない。つまり、どんな業種でも、どんな職種でも、日本人と同様、特に制限がなく就労することが可能だ。現在、運輸業のドライバーとして日本で活躍する、数少ない外国人材の多くは、この分野の人材だろう。

 しかし、この在留資格については、各業種や職種への就労について国や自治体が統制や管理をしていないため、外国人材を運輸業界が統括したり管理したりして、ドライバー業務に専従させるということは非現実的だ。同じ理由から、今後もこの在留資格で、まとまった数の外国人ドライバーの活躍は見込めないだろう。

2.技能実習生の活躍
 次に技能実習制度について考えてみよう。この制度は、日本の技術を海外へ移転し国際貢献することを目的として運用されているが、おおむね実態は日本国内の労働力不足を補うために運用されている。どの産業でも外国人材の受け入れが認められているわけではなく、現在は86の職種でのみ、技能実習生の雇用が認められている。また、前述のイギリスのドライバー、カナダのSAWPと同様、滞在年数に制限がある。

 しかし、ご存じの人も多いが、現在、この86の職種に道路貨物運送業務を担う職種は含まれていない。また2020年の6月、全日本トラック協会が自由民主党の外国人労働者等特別委員会に対して、ドライバーを技能実習制度の職種として追加するよう要請したが、2年経過した現在も認められていない。よって現状、この在留資格でも、外国人ドライバーの活躍は見込めない。

3.特定技能生の活躍
 最後に、特定技能制度について触れる。人手不足が深刻な業種での労働力の確保を目的とし、2019年4月に運用が始まったばかりの新たな在留資格が特定技能だ。制度開始当初は14業種、現在は製造業の統合があり12業種で外国人材の受け入れが認められているが、ここに道路貨物運送業務は含まれていない。またほぼ毎年、新たな業種として、コンビニと物流が新規に認められるのではないか――とメディアが報道しているが、本稿執筆段階では実現していないため、この在留資格でもドライバーの受け入れはできないこととなっている。

 2020年6月、経済同友会のリポート「物流クライシスからの脱却」で、物流改革を支えるひとつの選択肢として、この特定技能制度を活用した外国人ドライバーの実現に関する言及があるなど、経済界からは特定技能制度での外国人ドライバーの活躍に関して提言されているが、残念ながら実現していない。

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