日本ではなぜ「外国人トラックドライバー」が制限されているのか? 慢性的な人材不足に逆行、そんな業界に未来はあるのか
日本語コミュニケーション力は重要
語学力は、業務の安全性と直結している。例えばアメリカの語学研修会社、ロゼッタストーンのまとめたリポートには、米疾病対策センターによるデータとして、外国生まれのヒスパニック系労働者の死亡事故率が、同じヒスパニック系のネーティブ労働者よりも
「69%」
も高いことが紹介されている。
要するに、語学力(ここでは英語力)の程度が、死亡事故率に関わっている可能性が示唆されているのだ。もちろん、ここでわれわれが考えておきたいのは、外国人トラックドライバー自身の安全を守ることであり、加えて、日本のライフラインを彼らに預け、日本に住む、生活者たるわれわれの安全を確保するということである。
また、仮に死亡事故に至らない場合でも、例えば自身の業務を具体的に理解する際、あるいは安全性などの抽象的な概念を認識しようとする際、それを伝える企業が、日本語で書かれた書類しか準備していないなら、外国人ドライバーは、日本語ネーティブレベルの日本人向けに書かれたものを読んで理解するほかないかもしれない。また、日報のような記述業務があるなら、外国人ドライバーはそれを日本語で書くことになるかもしれない。さらに、日々の業務で、毎日のやりとりの多くは全て日本語で行われるかもしれない。
日本人上司の指示を聞き、それを理解し、質問があれば発話して確認したりする。こういった一連のコミュニケーションを進める上で、(指示を出す日本人の日本語の調整力もさることながら)外国人ドライバーの日本語レベルは極めて重要だろう。
すでに気づいている人もいると思うが、外国人スタッフの業務遂行能力を検討し、生産性を高めるためには、このように、仕事上の語学力を
・読む
・書く
・聞く
・話す
の4技能ごとに捉える必要がある。
また、それぞれの技能ごとに、そもそもその企業にはどういった業務があるのか自体を、企業側が各社で(または業界団体が統一的に)整理し、把握しなければならない。そうしないと、入社後になって、外国人スタッフのパフォーマンスが非常に悪いことにやっと気づいたり、一部の業務を遂行させられなかったりするという事態に陥る。
筆者(淺海一郎、外国人雇用アドバイジング)は日本貿易振興機構(JETRO)などの政府関係機関や東京都、群馬県、広島県など全国各地の都道府県を通して、外国人雇用企業で起きているこのようなケースの相談や支援に携わっているため、そういう事態にまで悪化した企業で働く日本人上司、外国人社員双方の苦悩がわかる。