日本ではなぜ「外国人トラックドライバー」が制限されているのか? 慢性的な人材不足に逆行、そんな業界に未来はあるのか
外国人ドライバーが敬遠される理由
ここまで在留資格制度という観点から、外国人トラックドライバーの滞在が広く認められていない現状を確認した。次は、その「業務上の特性」から、なぜ外国人トラックドライバーの活躍が認められないのか、その可能性について考察してみたい。
まず、道路貨物運送業務が本質的に、安全性に直結している点がある。これらの業務は、日本に暮らす人たちの生活を守ると同時に、人命に関わる事故に直結している。また、同じ理由から、専門的な教育が必要となる業務でもある。これは経済団体も同じ視点を有しており、先ほど触れた経済同友会のリポート内でも、特定技能での外国人ドライバー受け入れに向け、ドライバー側に提供すべき教育として、以下の点が挙げられている。
・母国と異なる「左側通行、右ハンドル」でのトラック車両の運転知識や技術
・荷扱い、荷詰めなどの積載に関する知識や技術
・車両点検、パンクへの応急処置、アルコールチェックなど運行管理に関する知識や技術
安全性を担保するため、外国人ドライバーを対象としてこのような育成研修を実施するべきであることに、読者からも異論は少ないだろう。
では、日本の運輸業の事業者は、こういった教育、育成研修プログラムの実現に関して、果たしてどの程度具体的な準備を進めているのだろうか。そもそも、背景となる文化も言語も異なる外国人材に向けた研修プログラムの開発は終えているのか。あるいは、大型免許の取得だけで、これらの問題が全て解決されるものと考えていいのだろうか。
次に、コミュニケーションはどうだろう。外国人の日本語レベルはまちまちだ。ましてや、特定技能制度で定められている日本語レベルの規定は、決して高くない。仮に、日常会話もおぼつかない外国人トラックドライバーが誕生したとして、この外国人ドライバーをどう育成研修していくのだろうか。
また、外国人ドライバーを採用する企業は、どういった採用基準を策定し、どのような方法で日本語レベルを確認し、その後、どのように育成するつもりなのだろう。こういった言語的な支援をどう考え、どう計画しているのかについて、経済界や業界団体から明確な声が聞こえてこない現状を考えると、外国人トラックドライバーとの日本語コミュニケーションについて、やや甘く見ていると少々心配になる。