なぜスズキは「軽トラ」にCO2回収装置を載せたのか? マツダとの差別化に見る“日本式脱炭素”の勝算
排出削減から炭素利活用への競争軸

これから5年から10年の見通しを立てるならば、二酸化炭素を集める技術がどこまで行き渡るかは、市場の動きに応じていくつかの道に分かれていく。
EVが主役となる未来が来れば、この仕組みはエンジンの生き残り具合に引っ張られるため、限られた場面での手助け役に落ち着くかもしれない。しかし、地域や使い道に応じて色々な乗り物が共存する未来であれば、日本のメーカーが掲げる歩み方に沿ってハイブリッド車を含むエンジン搭載車が一定の存在感を保ち続ける。その場合、EV施策と炭素回収技術は互いの足りない部分を補い合う対等な選択肢として並び立つ。さらに進んで、集められた炭素そのものが価値を持つ市場が育っていけば、炭素を捕まえる行為自体が儲けを生み出す独立した仕組みへと育っていく。
今の段階でどの未来が正しいかを決めてしまうのは早計だが、自動車メーカーはすでに「作って売る」というこれまでの商売の枠から踏み出し、他産業の炭素管理を支えるパートナーへと立ち位置を広げつつある。スズキは農業という地域の生活の場に入り込み、その土地で集めたものをその土地で使い切る巡りを作り上げた。もう一方のマツダは、レースでの試みを足がかりにエネルギー産業の製造プロセスへ働きかけ、より大きな産業の枠組みのなかで炭素を回す形を思い描く。価値を届ける相手が違うからこそ、両社はそれぞれに独自のビジネスエコシステムを築くことができている。
ここで本当に目を向けるべきは、集めた二酸化炭素を誰がどのように使い、社会の中でその価値をどう巡らせていくかという一点だ。二酸化炭素を減らす戦いは、出す量をいかに削るかという段階を終え、集めた炭素をどう生かし切るかという次の舞台へ移りつつある。スズキ and マツダの新しい動きは、動く車がほかの産業と溶け合いながら新たな環境価値を生み出し、産業全体の結びつきをより強固なものへ変えていく流れを物語っている。