なぜスズキは「軽トラ」にCO2回収装置を載せたのか? マツダとの差別化に見る“日本式脱炭素”の勝算
世界でEV販売が3割を占める大潮流のなか、日本の自動車産業は「EV一本道」に抗う新たな地平を切り拓きつつある。スズキの農業連携やマツダの燃料循環に代表される、走行排気からCO2を回収・利活用する独自の「適地適車」戦略。他産業を巻き込み、排出削減から「炭素の価値化」へ挑む最新の競争軸を追う。
既存インフラを生かすマツダの未来

もう一方でマツダが旗を振るMMCCは、環境に配慮した燃料で走りながら、同時に二酸化炭素も集めてしまう仕組みだ。燃料となる小さな藻は育つ段階でCO2を吸い込むため、作られた時点で排出量を約9割削れる。そこへMMCCが排気ガス中のCO2を2割捕まえることで、ふたつを合わせた計算上の削減効果は110%に達する。空気中の二酸化炭素を1割引き算するような考え方であり、エンジン車の持ち味を生かし、走ること自体で環境負荷を軽くしようという試みだ。
マツダは2025年11月のスーパー耐久シリーズ第7戦で、レース車「MAZDA SPIRIT RACING 3 Future concept(55号車)」にこの仕組みを初めて載せて走らせた。燃料にはヨーロッパで広がりつつあるバイオディーゼル燃料を選び、細かな穴を持つゼオライトが排気ガス中のCO2を吸い付ける様子を確かめている。
こうしたアプローチは、これまでの脱炭素の議論を「燃料と回収の仕組みをどう組み合わせるか」という方向へ引き戻す。エンジン車がこの先も選べるということは、部品メーカーや整備拠点、全国の燃料スタンドなど、長い年月をかけて育まれてきた物づくりの基盤を守ることに直結し、自動車産業に関わる人々にとっても無視できない重みを持つ。
これまで培ってきた技術の延長線上で環境対応を進める動きは、エネルギー業界や既存の部品供給網とも手を結び、産業全体で炭素を上手く巡らせていくための確かな土台となっていく。