なぜスズキは「軽トラ」にCO2回収装置を載せたのか? マツダとの差別化に見る“日本式脱炭素”の勝算
世界でEV販売が3割を占める大潮流のなか、日本の自動車産業は「EV一本道」に抗う新たな地平を切り拓きつつある。スズキの農業連携やマツダの燃料循環に代表される、走行排気からCO2を回収・利活用する独自の「適地適車」戦略。他産業を巻き込み、排出削減から「炭素の価値化」へ挑む最新の競争軸を追う。
多角化へ進む自動車の脱炭素戦略

不安定さが続く中東情勢を背景とした燃料価格の高騰は、世界市場でのEVへの移行を促す格好となっている。
日本経済新聞が2026年6月2日付で伝えたニュースによると、世界37か国において同年3月、あるいは4月のEV販売台数が月間で過去最高を塗り替えた。国際エネルギー機関(IEA)による最新の報告書を見てもこの傾向は明らかで、2026年の世界におけるEVの売れ行きは前年に比べておよそ1割伸びる。台数にして2300万台に達する勢いであり、新車市場全体の見通しとしても、そのおよそ3割をEVが占める計算だ。
だが、すべての移動手段やエネルギー源をひとつの仕組みに委ねてしまう形には、特有の危うさもつきまとう。配電網にかかる重い負荷や、原材料調達をめぐる国同士のかけひきといった難題が常に頭をもたげるからだ。こうした状況だからこそ、液体燃料とエンジンという従来の仕組みを残しながら二酸化炭素の排出を抑える試みが大きな意味を持ってくる。今あるインフラや物づくりの基盤をそのまま生かせるため、社会の初期費用の負担を抑えつつ、現実的な備えとすることが可能だ。
スズキやマツダが取り組む、走行中の排気から二酸化炭素を回収する技術の開発は、これからの脱炭素に向けた道筋が決してEVという一本道だけにとどまらないことを気づかせてくれる局面にきている。そこには多様な選択肢の広がりが見え隠れしている。