なぜスズキは「軽トラ」にCO2回収装置を載せたのか? マツダとの差別化に見る“日本式脱炭素”の勝算
世界でEV販売が3割を占める大潮流のなか、日本の自動車産業は「EV一本道」に抗う新たな地平を切り拓きつつある。スズキの農業連携やマツダの燃料循環に代表される、走行排気からCO2を回収・利活用する独自の「適地適車」戦略。他産業を巻き込み、排出削減から「炭素の価値化」へ挑む最新の競争軸を追う。
回収炭素の用途をめぐる両社の違い

両社が進める技術は、どちらもエンジン車から出るガスを捕まえ、空気中への排出を抑える点で目指すところは同じだ。しかし、集めた二酸化炭素の活用段階になると両社の姿勢は分かれる。
スズキが「人とくるまのテクノロジー展 2026」で披露したのは、軽トラックのスーパーキャリイに回収の仕組みを組み込んだ「CARBON CAPTURE CARRY」だ。排気ガスから集めたCO2を農作物の育成に役立てる試みで、カーボンニュートラル燃料(CNF)と掛け合わせることで、出す量よりも吸い込む量を増やし、実質的なマイナスを目指す。ガスの通り道を三方弁で切り替えて熱い排気を呼び込み、効率低下のもととなる水分を取り除きながら、吸着材でCO2を分離する。多様な走り方に対応しつつ、いかに費用を抑えて効率よく集めるかという現実的な開発が進んでいる。
これに対してマツダは、ジャパンモビリティショー2025で「Mazda Mobile Carbon Capture(MMCC)」を掲げ、すでにレースの場などで検証を重ねてきた。こちらは、小さな藻が育つときにCO2を吸収して作られるバイオ燃料を使い、製造段階で排出を大きく削ったうえで、走行時の排気からもCO2を回収する形だ。
回収後の循環方法を見ると、両社の違いはよりはっきりする。スズキが狙うのは、地域の農家がその場でCO2を使い切る地産地消だ。もう一方のマツダは、集めた炭素を再び燃料を作る工程へと戻し、より広い市場へ流通させる仕組みを思い描く。これは性能を競う話ではなく、集めたCO2をどのように社会へ回し、事業として長続きさせていくかという新たな競争の始まりを物語っている。