純利益「1250億円」が吹き飛ぶ衝撃――ナフサ不足が突きつけた「自動車 = 石油化学製品」という現実、脱・中東依存は可能か
供給分散とコスト増の課題

中東からのナフサ供給に大きく依存してきた体制の危うさが露呈した今、日本が進むべき道は決して平坦ではない。
コストの増加を呑んででも自立を優先するのか、それとも供給の不安定さというリスクを抱えたまま、安価な原料を追い求め続けるのか――いずれも産業の命運を左右する重い決断だ。これまでエネルギーの確保には心血を注いできた日本だが、その土台となる
「素材の確保」
という視点は、抜け落ちていた。この空白が、いまや看過できないリスクとして浮き彫りになっている。
中東以外からの調達量を引き上げるという実績は、供給途絶を防ぐための現実的な一手といえる。既存の設備を活かしながら供給網を広げられる点は強みだが、一方で北米などからの輸入拡大は、物流面での新たな火種を抱え込むことにもなる。
中東航路に比べて輸送距離は大幅に伸び、パナマ運河などの要所での滞留リスクにさらされる。輸送費の上昇が常態化すれば、それは巡り巡って車両価格を押し上げ、日本車が長年築いてきた価格競争力を根底から損なう懸念を拭いきれない。
国内の石油化学部門で収益が悪化するなか、エチレンの生産拠点を整理し、その規模を縮小させるという選択肢も浮上している。非効率な拠点を整理すれば、目先の利益水準を改善することは可能だろう。
しかし、これは国内の供給能力を自ら削ぎ落とす行為にほかならない。日本の自動車メーカーにとって、厳しい要求に応え続けてきた国産素材を失うことは、開発の自由度を奪われることを意味する。これまで国内で完結していた迅速な納入体制が崩れれば、生命線ともいえる素材を海外勢に委ねざるを得なくなる。
植物由来の原料や再生素材への転換は、石油依存から脱却するための有力な処方箋だ。価格変動の荒波を受けにくく、環境負荷の低減にも直結する。
だが、製造コストの高さや普及の遅れが、依然として大きな壁として立ちはだかる。極めて高い耐久性と安全性が求められる自動車部品において、新素材が現行の基準をクリアするのは容易なことではない。この道を選ぶのであれば、日本車が追求してきた過剰なまでの品質水準そのものを見直す、痛みをともなう決断が避けられないだろう。