純利益「1250億円」が吹き飛ぶ衝撃――ナフサ不足が突きつけた「自動車 = 石油化学製品」という現実、脱・中東依存は可能か

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ナフサ不足が末端を直撃した。福井ではシンナー在庫が2週間分に低下し価格は4倍、122社中4割が下方修正と利益1250億円減。燃料ではなく素材の供給が揺らぐいま、日本の製造業は根幹からの見直しを迫られている。

中東依存が生む供給リスク

石油精製工場で行われていること(画像:石油化学工業協会)
石油精製工場で行われていること(画像:石油化学工業協会)

 日本のエネルギー供給の屋台骨とも言える輸入ナフサ。その約7割を中東産が占めている事実は、私たちの経済がいかに不安定な足場の上に立っているかを物語っている。今回の供給不安も、結局のところはこの「産地の偏り」という構造的な歪みから生じたものだ。

 もちろん、政府が手をこまねいているわけではない。経済産業省の動きを見ると、中東依存からの脱却を急ぐ姿勢がうかがえる。平時は月45万kL程度だった中東以外からの供給量を、現在は90万kLまで引き上げた。なかでも米国からの調達は30万kLに達しており、調達先の多角化は着実に進んでいるようにも見える。

 こうした状況下で、木原稔官房長官は2026年4月6日の記者会見に臨んだ。SNS上で飛び交う「6月にもナフサが不足する」という言説に対し、明確に釘を刺した形だ。「誤ったものと認識している。真偽不明や不安に思う情報に接した場合は、政府の公式見解を確認してほしい」と語り、情報の拡散を控えるよう求めた。木原氏は、すでに確保した輸入分と国内で精製した分で2か月分、さらに中間製品の在庫を合わせれば計4か月分のストックがあるという具体的な数字を挙げ、「現時点で需給上の問題は生じておらず、日本全体として必要となる量を確保している」と強調した(『共同通信』2026年4月6日付け)。

 ただ、数字上の計算が合えばそれで安心かといえば、そう単純な話ではないだろう。仕入れ先を中東から米国へ切り替え、目先の量を積み増したとしても、それだけでこの問題のすべてが片付くわけではないからだ。

 日本の石油を分解する設備は、長年、中東産ナフサの性質に合わせて細かく調整されてきた。そこに性質の異なる米国産などを急に投入すれば、歩留まりが悪くなる。結果として、特定の高機能樹脂の不足がさらに深刻化する恐れをはらんでいる。

 つまり、確保できた「量」が、そのまま現場が求める「質」に直結するとは限らないという、技術面の壁が立ちはだかっているのだ。調達先の切り替えは場当たり的なしのぎにはなっても、特定の素材に依存しきる国内産業の脆さを根本から取り除く解決策にはなっていない。

 どこの国から運ぶにせよ、土台となる素材の供給が止まれば、産業の動きそのものが止まってしまう。この厳然たる事実は、どこまでもついて回るのだ。

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