「立件されるとは思わなかった?」 電動キックボード初の書類送検、規制緩和は本当に間違いだったのか?――関連事故280件で考える
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都市で広がる電動キックボード。免許不要の制度は市場を生んだ一方、事故280件・違反関与約9割という現実も突きつけた。さらに講習を拒み続けた利用者が全国初の書類送検。利便と安全、その負担は誰が担うのか――制度の評価が割れる理由を追う。
規制緩和の功罪

都市の道路で電動キックボードの姿を見かける機会が増えた。便利な移動手段として広がる一方で、議論も熱を帯びている。2023年7月に始まった特定小型原動機付自転車の制度(一定条件の小型電動モビリティを対象とする新しい車両区分で、電動キックボードなどが含まれる)は、16歳以上であれば免許なしで使えるという大胆な緩和が柱だった。だが、事故や違反が続いたことで、この判断そのものを疑問視する声も強まっている。
象徴的な出来事が2026年3月に起きた。警視庁は講習の受講を拒み続けた男性を、全国で初めて書類送検した。制度の想定から外れたケースが、現実に表れた形だ。このニュースが示すのは個人の違反だけではない。免許制度を通さずに利用の門を広げた結果、行政側の指導や対応にかかる負担が大きくなっている現実も浮かび上がる。
では、この制度は失敗だったのだろうか――実のところ、議論は単純な賛否の対立ではない。どの前提を重く見るかによって、評価がわかれている。制度導入の背景には、都市部で増える短距離移動の需要やシェアリングサービスの広がり、脱炭素への対応といった事情がある。利用の壁を極力下げたのは、市場を立ち上げるためだった。
ただ、その選択は別の意味も持つ。本来なら利用者が担うはずの安全教育の負担が、公的な役割として外へ移ったということだ。交通ルールに詳しくない人でも車道を走れるようになり、その安全を保つための手間を行政が引き受けているのだ。