「立件されるとは思わなかった?」 電動キックボード初の書類送検、規制緩和は本当に間違いだったのか?――関連事故280件で考える

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都市で広がる電動キックボード。免許不要の制度は市場を生んだ一方、事故280件・違反関与約9割という現実も突きつけた。さらに講習を拒み続けた利用者が全国初の書類送検。利便と安全、その負担は誰が担うのか――制度の評価が割れる理由を追う。

問われているもの

電動キックボード新制度の現在地。
電動キックボード新制度の現在地。

 電動キックボードの制度は、導入からまだ数年しかたっていない。この短い期間の結果だけで、政策の成否をいい切るのは難しいだろう。むしろ、この制度がどのような摩擦を表に出したのかに目を向ける必要がある。前述のとおり、警視庁管内で2563人が講習を受けたという事実は、教育が一定の抑止力を持つことを示している。

 ただ、その一方で、一人の違反者に8回以上の督促を重ねた例もある。個人の善意に頼るやり方が、すでに限界に近づいていることも見えてくる。

 規制緩和が誤りだったのか――この問いへの答えは、社会がどの利益を重く見るかで変わる。交通事故の抑制を最優先に考えるなら、いまの仕組みは十分とはいいがたい。反対に、都市の移動を効率よくし、新しい市場を育てることに重きを置くなら、いま続いている試行錯誤にも意味がある。

 利便性という個人の恩恵と、安全管理という公の負担。その釣り合いをどう整えるのかが問われている。この制度は、都市の空間という限られた資源をどうわかち合うかという課題を私たちに示している。いまの状況を失敗と切り捨てるのは早いだろう。新しい交通の形を社会に根づかせるための代償として受け止め、改善を重ねていくことが求められる。

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