「オラオラ顔で威圧される……」 巨大化するフロントグリル、なぜ自動車メーカーは美学を捨てて拡大するのか?

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世界86か国で中国ブランドが前年比18%増の1971万台を記録。巨大化するフロントグリルは、嗜好と市場戦略を映し、欧州・日本メーカーの存続戦略を如実に示す。

フロントグリル巨大化の裏側とは

オールラウンド・カメラやレーダー・システムなどが組み込まれた、ニューBMW iXのキドニー・グリル(画像:BMW)
オールラウンド・カメラやレーダー・システムなどが組み込まれた、ニューBMW iXのキドニー・グリル(画像:BMW)

 世界の自動車市場を眺めると、2000年代中盤以降、各メーカーのフロントグリルは徐々に大きくなってきた。特に輸入車では、かつて控えめだったグリルが車の顔の大部分を占めるほどにまで拡大し、時には“オラオラ顔”などと呼ばれる迫力あるデザインが目立つようになっている。この傾向は、プロダクトとしての調和を優先するよりも、路上での視覚的な存在感を確保することを重視するメーカーの姿勢の現れと見ることができる。

 自動車デザインの歴史を振り返れば、2004年に登場した3代目アウディ A6が採用した「シングルフレームグリル」が、現代の大型グリル潮流の端緒のひとつとされる。以降、多くのメーカーがこの流れを追い、特にBMWは顕著な例だ。

 同社は2019年に最上級セダン「7シリーズ」をマイナーチェンジした際、ブランドの象徴であるキドニーグリルの面積を約40%拡大した。さらに電動モデルの「i4」や「iX」でも、冷却の必要がなくなったにもかかわらず、グリルをあえて大きく取り入れている。モーターに置き換わった時代でも、物理的な面積によってブランドの存在感を示し続ける戦略だ。

 こうした動きは輸入車に限らない。国内でもトヨタのアルファードやヴェルファイア、日産セレナをはじめ、スポーツタイプ多目的車(SUV)やミニバンの多くが大型グリルやメッキを多用し、街の風景に新しい顔つきを刻んでいる。車の所有者が社会的な階層や立場を瞬時に示す手段として、他車に心理的な圧力を与える効果を狙ったデザインは、いまや避けがたい潮流になった。

 では、なぜメーカーはグリルの巨大化という一見リスクのある選択を続けるのか――本稿では、その背景にある構造と戦略の奥行きを探っていきたい。

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