高性能の代名詞「ターボチャージャー」はなぜ廃れ、いかにして現代に甦ったのか
乗用車への初採用は1961年秋
エンジンに吸い込む空気を圧縮する過給機をエンジンの排気ガスで駆動するという「ターボチャージャー」を装備したクルマは、かつては世界の自動車シーンにおいてハイパフォーマンスの代名詞というべき存在だった。
本来はレシプロピストンエンジンで飛ぶ航空機において、空気の密度が低い高空を飛行するための性能向上装置だったターボチャージャーが、地上の1気圧下で使用されるようになったのは第2次世界大戦後間もなくのこと。
最初は、建設機械や産業機械用のディーゼルエンジンを通じてのこと。採用の目的は、より少ない燃料で効率良く高出力を得るためのデバイスだった。
それがガソリンエンジン車の付加価値としての性能向上装置として、一般消費者向けの乗用車に初めて採用されたのは1961(昭和36)年秋。翌1962年型のニューモデルとしてアメリカの自動車市場に登場したジェネラル・モータースの2モデル。シボレー・コルベア・コルサと、オールズモビルF-85ジェットファイアだった。
前者は、排気量145立方インチ(約2375cc)の空冷水平対向6気筒にシングルターボを装備した150hp。後者は、排気量215立方インチ(約3520cc)の水冷V型8気筒に同じくシングルターボを装備した215hp。
どちらも発売時の広告では、優れたパワーを発揮できる速いクルマであることが強くアピールされていた。
同年式の同モデルで、ターボチャージャーが付いていなかった仕様の最高出力は、前者が8p~104hp、後者が185hpと、それなりの明確な出力差があったことは言うまでもない。ただし当時のアメリカ車の市場は、基本的に大排気量高出力車の人気が高かったこともあり、2種類のターボ車はいずれも数年で市場から淘汰(とうた)されることを余儀なくされた。