高性能の代名詞「ターボチャージャー」はなぜ廃れ、いかにして現代に甦ったのか

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かつては世界の自動車シーンにおいてハイパフォーマンスの代名詞というべき存在だった「ターボチャージャー」。技術開発の歴史とともに変化するその役割を追う。

内燃機関の「理想形」を追求

1963年型シボレー・コルベア・コルサ・コンバーチブルのエンジンルーム。奥にターボチャージャー本体が見える。向かって左からエアクリーナー、キャブレター、ターボチャージャーと並んでいる。まず混合気を作ってそれを加圧するシステムは現在のターボでは見られない(画像:矢吹明紀)
1963年型シボレー・コルベア・コルサ・コンバーチブルのエンジンルーム。奥にターボチャージャー本体が見える。向かって左からエアクリーナー、キャブレター、ターボチャージャーと並んでいる。まず混合気を作ってそれを加圧するシステムは現在のターボでは見られない(画像:矢吹明紀)

 実際、昨今のダウンサイジングターボは、その多くで10:1前後の圧縮比が確保されている。これは、かつてなかった高いレベルであると言って良いだろう。

 さらに、純粋な過給エンジンとしての熱効率の追求とは少し方向性が異なるものの、日産のシリーズハイブリッド用新型エンジンであるVCターボは、無過給状態での効率を重視した14:1からフル過給フルパワー状態の8:1までの可変圧縮比を可能としているという興味深い存在である。

 燃費など関係なしでパワーのみを追求した初期のターボ車に対して、現在のそれは燃焼効率とパワーの両立という意味では、内燃機関としての理想を追求した存在である。

 現在の自動車技術界の趨勢(すうせい)は、言うまでもなく内燃機関から電動化へのスイッチに他ならないのだが、その一方であくまで内燃機関としての理想を追求する姿勢も高く評価すべきことである。

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