高性能の代名詞「ターボチャージャー」はなぜ廃れ、いかにして現代に甦ったのか
かつては世界の自動車シーンにおいてハイパフォーマンスの代名詞というべき存在だった「ターボチャージャー」。技術開発の歴史とともに変化するその役割を追う。
高圧縮比と高過給圧の両立
こうした路線変更の背景には、シリンダー内直接燃料噴射、可変バルブタイミング、圧縮行程に対して燃焼行程を長く取るミラーサイクル、さらには先進の総合的なエンジンコントロールマネージメント技術などの進化も無関係ではない。
より小さな排気量で効率良く高出力を目指すという新たな技術的挑戦の場にターボが使われるようになったということである。
そしてここで特に注目すべき技術だったのは、ターボ付きでありながら圧縮比の数値が以前より高く維持できていたという点である。
これはどういうことかというと、ターボチャージャーを含めたあらゆる過給エンジンでは、基本となるエンジンの圧縮比は最大過給圧を想定して設定されるのが必須であり、基本構造を同じくする自然吸気仕様に対して、圧縮比は低く設定せざるを得なかった。
具体的には、自然吸気仕様の圧縮比が10:1だとしたら、ターボ仕様は8:1程度にならざるを得なかった。
しかし、これでは過給圧が高まっていない状態でのエンジンの燃焼効率が良くないということを意味する。
かといって圧縮比を高めに設定してしまうと、フル過給時に異常燃焼を起こしやすくなり、エンジンを破壊してしまう危険性も高まる。
高圧縮比と高過給圧の両立はある意味ターボも含めた過給エンジンの至上命題であったわけだが、それを実現可能としたのがダウンサイジング仕様も含めた最新のターボメカニズムだったのである。