中国製EV関税「100%→6%」という衝撃――カナダ市場が大歓迎? 農業と引き換えに“聖域”を開いた等価交換の大波紋
北米市場で中国製EVの参入が現実味を帯び始めた。カナダは初年度4.9万台の関税引き下げ枠を設定し、低価格EVの流入で消費者選択肢が拡大する一方、既存メーカーは価格競争と生産体制の転換を迫られる構図が鮮明になっている。
400万円EVが押し寄せるカナダ市場

カナダでは、中国から直接供給される低価格帯のEVが市場に流入し、消費者の選択肢は大きく広がる見通しだ。政府は車両価格の下限を実質的に押し下げ、現在13%前後にとどまるEV普及率を25%近くまで高める意向を示している。従来、購入補助金として充てられていた公的資金も、関税引き下げによる市場価格の自律的な低下に振り向けることで、財政負担の調整を図ろうとする狙いも透けて見える。
こうした政策の恩恵を受けるのは限られたメーカーに偏るとの指摘もある。ボルボやポールスター、ロータスを傘下に持つ吉利汽車、そしてテスラがその代表だ。テスラは2023年に4.4万台をカナダへ輸入しており、中国工場からの供給比率が高まることは確実だ。ただし輸入枠の約半数が3.5万カナダドル(約400万円)以下の車両に優先配分されるため、現行ラインナップの多くはこの優遇枠から外れる。結果として、比亜迪(BYD)などの中国製低価格ブランドが北米市場の空白を埋める、事実上の専用通路として機能する構図が生まれる。
一方、米国政府は中国からの完成車輸入を依然として制限している。トランプ政権が示す現地生産を条件とした参入容認は、雇用維持を優先しながら、高度なセンサーやOSを備えた中国製EVを国内法規制下で監視する、防衛的な性格が色濃い。北米自由貿易圏におけるこうした政策の不一致は、共通の部品供給網に依存してきた従来構造を揺るがし、将来的に国家間の摩擦を深める火種となる可能性を秘めている。