「残クレ」契約者が急逝――遺されたのは「高級車」「多額の借金」、遺族を襲う「負の遺産」のリアルとは

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新車購入の約2割が残価設定型ローン(残クレ)を選ぶ時代。月額抑制の利便性の裏で、契約者死亡時の債務処理や相続のリスクが顕在化せず、家計構造に潜む危険が浮き彫りになっている。

支払い方法の大転換

自動車(画像:写真AC)
自動車(画像:写真AC)

 日本の新車市場において、支払い手段のあり方は決定的な転換期を越えた。かつての主流だった現金一括払いが勢いを失う一方で、残価設定型ローン(残クレ)が市場のインフラとして定着している。

 2023年12月にジョイカルジャパン(東京都品川区)が公表した調査結果を振り返ると、その変化の激しさが浮き彫りになる。2012(平成24)年から2013年頃には「現金一括購入」が全体の75%を占めていたが、2021年には56%まで減少した。

 対照的に、2007年以前はわずか3%に過ぎなかった「残価設定あるいは据置型ローン/クレジット」は、2014年以降に急成長を遂げ、2018年には

「20%」

の大台に到達した。現在も新車購入者の5人にひとりが、将来の価値を据え置いて月々の支払いを抑えるこの方式を選択している。

 利用形態の多様化も進んでおり、20%前後を維持する「一般ローンクレジットを利用」に加え、リースが3~4%に微増し、2021年には1%ながらサブスクリプションも統計に現れ始めた。もはや残クレは一部の層による特殊な買い方ではなく、

「中産階級の一般的な選択肢」

となった。新車価格の上昇にともない、この制度を頼りに車を手にするユーザーが増えるなかで、注視すべきは買い方のバリエーションが増えたことではない。家計における負債構造そのものが、出口のリスクをはらんだ形へと根底から変化したという点である。

 現行の残クレ制度には、利用者が意識しにくい前提条件が組み込まれている。車両の所有権は完済までディーラーや信販会社に留保され、契約者が死亡しても債務が自動的に消滅することはない。さらに車両を返却しても、状況によっては債務が完済されないケースが厳然として存在する。

 かつて高額な車を購入することは、相応の負債を抱えるという

「強い警戒心」

をともなうものだった。しかし将来の中古車価値を担保に今の負担を軽減する仕組みが普及したことで、実態以上に支払い能力を過信しやすい土壌が生まれている。契約者の死亡という重大な局面は制度上ほとんど想定されておらず、そこには所有と負債のねじれが生んだ深刻な構造的リスクが潜んでいるのだ。

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