「9連休でも帰省しませんでした」 LINEで両親の顔が見えるのに「わざわざ帰る」意味はあるのか? 令和の人間関係を考える

キーワード :
,
9連休でも6割が「予定なし」。年末年始の帰省は、もはや当然の行動ではなくなった。平均予算は約4.8万円と減っていないが、混雑や負担を避ける選択が広がる。移動の意味が変わるなか、日本社会とモビリティ経済はいま大きな転換点に立っている。

消費の軸足は「移動」から「滞在」

現代の帰省イメージ。
現代の帰省イメージ。

 移動が社会的義務から個人の選択へと変わりつつある。帰省や旅行が「しなければならないもの」ではなくなったことで、社会の消費構造にも変化が現れているのだ。

 年末年始に帰省や長距離移動を控えた人は少なくない。調査では、移動を見送ったことで一人当たり平均約4万8000円の可処分資金が生まれている。その資金は消費から消えたわけではない。多くは自宅を起点とした内向きの支出に振り向けられているのである。

 目立つのは、移動しない時間の質を高める消費だろう。大型テレビや音響機器への買い替え、動画配信サービスの複数契約など、家庭内で完結するデジタル消費が伸びている。あわせて、自宅で楽しむ高価格帯のおせちや惣菜、近隣ホテルを利用した短期滞在など、遠出をともなわない高付加価値消費も増加している。

 こうした動きは、帰省や旅行といった一斉移動が生み出してきたピーク需要が弱まりつつあることを示している。同時に、消費が特定の時期や場所に集中するモデルから、日常生活を少しずつ底上げする分散型の支出構造へ移行していることがうかがえるのだ。

 地方との関わり方も変わり始めている。従来の帰省は、実家や親族という「家」を軸にした移動だった。しかし今後は、その土地そのものへの関心や関係性を理由とする訪問が増えていくはずだ。

 訪問時期を盆暮れ正月からずらし、自身の仕事や生活リズムに合わせて地方を訪れる動きはすでに広がっている。リモートワークの普及が、この流れを後押ししている。平日は仕事をしながら週末に地域を楽しむワーケーションや、都市と地方を行き来する二拠点生活は、血縁に依らず、仕事や趣味を通じて地域と継続的につながる手段として定着しつつあるのだ。

 スマホやSNS、LINEの普及により、物理的に離れていても日常的なコミュニケーションは成立するようになった。その結果、移動の意味は「会うため」から「関わり続けるための選択肢のひとつ」へと変わっている。帰省とは何か、離れて暮らすとはどういう状態なのか。その前提自体が、静かに書き換えられ始めているのである。

全てのコメントを見る