「9連休でも帰省しませんでした」 LINEで両親の顔が見えるのに「わざわざ帰る」意味はあるのか? 令和の人間関係を考える

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9連休でも6割が「予定なし」。年末年始の帰省は、もはや当然の行動ではなくなった。平均予算は約4.8万円と減っていないが、混雑や負担を避ける選択が広がる。移動の意味が変わるなか、日本社会とモビリティ経済はいま大きな転換点に立っている。

年末年始移動をめぐる前提崩壊

現代の帰省イメージ。
現代の帰省イメージ。

 かつて日本では、年末年始のいわゆる“民族大移動”が疑いようのない社会規範だった。しかし筆者は前稿で、その前提がすでに揺らぎ始めていることを指摘している。

 調査会社インテージが2025年12月25日に発表した調査(全国の15歳から79歳の男女5000人対象)によれば、年末年始に旅行や帰省の予定はないと答えた人は「60.2%」に達した。帰省予定者は14.4%にとどまり、特に30代ではこの2年間で約10ポイント低下している。移動しないという選択が、一部の例外ではなく、標準的な行動へと変わりつつあるのだ。

 注目すべきは、これが節約志向の結果ではない点である。年末年始の国内旅行・帰省の平均予算は4万7871円と、むしろ微増している(前年比103%)。動かない理由は金額そのものではなく、混雑や準備、長時間の移動といった負担全体が、移動によって得られる意味を上回るようになったからだろう。

 心理的なハードルも無視できない。調査では、義理の実家への帰省を「憂鬱」だと感じる妻が6割を超えている(2023年7月にgreeden発表。義理の実家に帰省する妻1001人対象)。家事や挨拶、場の空気への同調など、役割を演じること自体がストレスとなり、長距離移動をためらわせているのだ。

 さらに、移動減少の影響は地域によって非対称に現れる。都市部では移動せずとも年始の生活は成立するが、地方の交通や宿泊、商業は帰省客に強く依存しており、移動の減少はそのまま地域経済の縮小に結びつく。年末年始の移動をめぐる変化は、個人の選択にとどまらず、都市と地方の構造差を浮き彫りにしているといえよう。

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