「結局は税金頼みなのか」 和歌山の伝説的ローカル線、公設民営化をめぐる賛否――“名物駅長”が救った赤字5億、その19年後とは

キーワード :
, ,
和歌山電鐵は貴志川線(14.3km)で、みなし上下分離から完全上下分離へ踏み切る。年間1.5億円の赤字でも、地域全体では10億円超の便益が見込まれるという試算。ローカル線維持を「企業収支」から「地域収支」で捉え直す実験が始まる。

地域交通を支える国・自治体の財源論

アニメキャラクターのラッピング電車(画像:和歌山電鐵)
アニメキャラクターのラッピング電車(画像:和歌山電鐵)

 この収支計算は20年前の推定に基づくものであり、少子高齢化による人口減少、道路整備に伴う交通環境の変化、自然災害の頻発、鉄道設備の老朽化などを踏まえ、最新データでの再検証は欠かせない。完全上下分離への移行によって地元自治体の負担が増える点についても、評価は分かれるだろう。

 それでも、地域全体の収支が黒字となるのであれば、完全上下分離方式への移行は、鉄道運営企業、自治体、地域住民のいずれにとっても合理的な選択となる。

 一方で、見過ごせない論点もある。前述の、両備グループCEOで和歌山電鐵社長の小嶋光信氏は、2025年11月25日に両備グループ公式サイトで公開した「和歌山電鐵完全上下分離方式移行へのご挨拶」のなかで、地域活性化や観光、インバウンド拡大に取り組む姿勢を示した。そのうえで、地域交通を持続可能にする手段として、道路運送法の改正や、暫定税率廃止後の新たな財源として「環境交通目的税(仮称)」15%の創設を目指す考えに言及している。

 地域交通の持続可能性を高める方向性自体に、大きな異論は出にくい。ただし、暫定税率廃止後の財源として新税を創設することには慎重な議論が必要だ。

 デフレ局面を脱し、経済成長の兆しが見え始めた現在、歳入が上振れしている局面でもある。その一部を地域への投資と位置づけ、地域交通の維持に充てるという発想も検討に値するだろう。

全てのコメントを見る