「結局は税金頼みなのか」 和歌山の伝説的ローカル線、公設民営化をめぐる賛否――“名物駅長”が救った赤字5億、その19年後とは
経営努力と自治体・沿線住民の熱意

和歌山電鐵が完全上下分離方式へ移行すると発表したことは、多くの人にとって意外だった。和歌山電鐵は、
・たま駅長
・ニタマ駅長
に代表される猫を活用したプロモーションをはじめ、民間企業としての工夫によって赤字ローカル線を再生させた成功例として語られてきたからだ。
こうした独自の取り組みは、完全上下分離への移行を控えた現在も続いている。2026年1月7日、貴志駅では初代駅長「たま」の就任記念式典(2007〈平成19〉年1月5日就任)が開かれ、新たな猫社員「ろくたま」が駅長候補生として披露された。ろくたまは岡山県で保護された三毛猫で、小嶋光信社長から辞令を受けている。同時に、「ごたま」が伊太祈曽駅長に、「よんたま」が貴志駅長に就任した。新体制の下でも、民間事業者ならではの集客策を維持する姿勢は明確だ。
南海電気鉄道が廃止方針を示していた当時、貴志川線の年間赤字は約5億円に上っていた。2006年に和歌山電鐵が運営を引き継いだ後、赤字額は年1億円程度まで縮小している。ただし、黒字化を達成したことはない。
両備グループが貴志川線への支援を表明した際に示した再建構想も、民間事業者だけで黒字転換を図る内容ではなかった。公有民営の枠組みを採り、第三セクターではなく両備グループの100%単独出資としたうえで、地元自治体や沿線住民が参加する運営委員会を設け、利用促進に取り組む構想だった。鉄道用地は和歌山県が全額補助し、和歌山市と旧貴志川町が南海電鉄から取得している。
この再建は、自治体や沿線住民の主体的な関与を前提としていた。両備グループは経営努力を尽くす一方で、民間の鉄道運営企業だけによる再建には当初から慎重な立場を取っていた。
実際、両備グループは北関東のローカル私鉄が廃止される際に支援を要請されたが、自治体や沿線住民の動きが十分でないと判断し、引き受けを見送っている。