「結局は税金頼みなのか」 和歌山の伝説的ローカル線、公設民営化をめぐる賛否――“名物駅長”が救った赤字5億、その19年後とは

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和歌山電鐵は貴志川線(14.3km)で、みなし上下分離から完全上下分離へ踏み切る。年間1.5億円の赤字でも、地域全体では10億円超の便益が見込まれるという試算。ローカル線維持を「企業収支」から「地域収支」で捉え直す実験が始まる。

完全上下分離による名実一体の公有民営化

和歌山電鐵のいちご電車(画像:写真AC)
和歌山電鐵のいちご電車(画像:写真AC)

 和歌山電鐵(和歌山市)は2025年11月25日、和歌山県、和歌山市、紀の川市と「完全上下分離方式」による公有民営化に向けた合意書を締結した。これにより、同社が運営する貴志川線(和歌山―貴志、14.3km)は、2028年4月以降、完全上下分離方式へ移行する。

 完全上下分離方式とは、線路や駅舎などの鉄道インフラを自治体が保有・維持管理し、列車の運行や営業を民間の鉄道事業者が担う仕組みである。自治体側の財政負担は増す一方、運行事業者は設備投資や維持費の負担を抑えた経営が可能となる。近年は赤字が続くローカル線を維持する手法として、この方式を検討、採用する自治体が増えている。

 和歌山電鐵と関係自治体は、今回の合意以前は「みなし上下分離方式」を採用していた。この方式では、インフラの所有と管理は形式上は民間事業者が担うものの、実質的には自治体が保有・維持しているとみなし、補助金を通じて支援を行う。完全上下分離方式に比べて自治体の負担が小さいため、導入例はさらに多い。

 今回の合意により、和歌山電鐵はみなし上下分離方式から完全上下分離方式へ移行する。同社は、この転換によって経営を赤字から黒字へと転換できるとしている。

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