「世界最大の見本市」に日本自動車メーカー“ゼロ” CES出展はもはや無意味になったのか? 価値の重心は「車体」から「知能」へ

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CES 2026はもはや自動車の舞台ではない。完成車メーカーの収益中心は依然として販売に依存する一方、電子・ソフトウェア分野の利益率は6%と高水準に維持され、付加価値の重心はサプライヤー側に移行している。この構造変化が、日本メーカーの出展控えを象徴する。

バリューチェーンによる収益拡大

トヨタ自動車の2025年3月期決算発表資料より(画像:トヨタ自動車)
トヨタ自動車の2025年3月期決算発表資料より(画像:トヨタ自動車)

 完成車メーカーは今後、電子やソフトウェアを事業の柱に据える必要がある。これにより新たな収益源を確保し、車の販売後も長期にわたって顧客とつながる体制を整えることができる。自社の技術を車両の一部として埋没させず、事業単位で外部へ提供していく姿勢も求められる。場合によっては、M&Aなどを通じて事業ポートフォリオを大胆に見直す決断も必要になる。

 車両の販売以外でも収益を成立させる構造を持つことは不可欠だ。この点でトヨタは、バリューチェーンを重視する戦略を明確にした。世界中で販売した1億5000万台の保有車両を新たな財務基盤と位置づけ、既存ユーザーとの関係を維持することで、サービス収益を伸ばす方針に転換している。

 一方で、製造効率の追求のみに競争力を求める企業は、厳しい現実に直面することになる。販売台数を積み上げるだけのビジネスモデルは、新車需要に依存する収益構造から抜け出せず、成長の限界に直面する。展示会を販促活動の場としか捉えられなければ、業界の潮流から取り残されるリスクは高まる。

 CESへの出展は、技術力を誇示するための行事ではない。自社の収益源がどこにあり、どのような役割を社会で果たすのかという企業の存在意義を示す行為である。出展の目的が明確でない場合、あえて出展を見送る判断もひとつの戦略として評価されるべきだ。日本の自動車メーカーがCESへの出展を控えているのは、意欲の問題ではなく、産業の価値が移動した結果である。この変化に事業構造が適応しない限り、CESとの距離が縮まることはない。

 将来的に日本のメーカーの出展が増えることがあれば、それは自動車産業そのものの定義が書き換えられた証拠となるだろう。

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