「世界最大の見本市」に日本自動車メーカー“ゼロ” CES出展はもはや無意味になったのか? 価値の重心は「車体」から「知能」へ
自動車産業の構造転換

2010年代後半から、自動車産業を取り巻く環境は大きく変化した。2017年にダイムラー(当時)が発表した中長期戦略「CASE(Connected, Autonomous, Shared & Service, Electric)」は、その転換点を象徴し、産業は変革期に入った。電気自動車(EV)へのシフトが進むなかで、自動車の動力はエンジンからモーターに移り、部品点数は約3万点から2万点に減少すると予想される。
特に約1万点に上るエンジン周辺部品の多くが不要となり、駆動系部品の需要は大幅に縮小する。エンジン車由来の事業を展開する企業は、収益源の急速な縮小に直面し、抜本的な事業転換を迫られている。
車両の差別化要因は従来の機械的な要素から電子分野へ移行し、制御やソフトウェアの重要性が高まった。完成車メーカー各社は、ソフトウェア定義車両(SDV)の量産化を進めている。車両の価値が物理的な性能よりもソフトウェアの機能に依存する構造が形成されつつある。
収益源は新車販売の一時点から、ユーザーが利用する期間全体へ分散し、ソフトウェア更新による課金制度が注目され始めた。生成AIの進展により、ユーザーの利用データを活用した継続的収益も現実味を帯びている。結果として、自動車は移動手段という枠を超え、常に機能が更新されるプラットフォームに変質している。
この過程で、半導体や車載OS、クラウド事業者などが産業の上流を押さえつつある。彼らにとって自動車は最終製品ではなく、自社の技術を走らせるための基盤であり、そこから得られるデータを活用した収益モデルが構築されている。かつての家電見本市が電子分野やソフトウェア中心の展示会へと姿を変えたことは、この産業の変化と同期している。
自動車向けのアプリケーションであっても、それが先端技術であれば、CESは自社の価値を証明する場として再評価されている。