EVバブル崩壊? トヨタ電池工場「11月再延期」という現実――中国“需要5.6倍供給”が示す過剰投資の行方
筆者の意見

EV用電池産業は、量的拡大の段階を終え、質と持続性が問われるフェーズに入った。世界を席巻した「EVバブル」による過剰投資で、各地に過剰な工場が生まれ、財務リスクを悪化させる要因となっている。
こうした状況を打破するため、中国政府は国家主導の淘汰戦略に近い政策を打ち出した。中国工業情報化省は、電動化シフトを推進するなかで、2015年からリチウムイオン電池の安全性に関する国家基準を施行した。
2018年と2021年の改定では、企業の売上高に占める研究開発費比率を3%以上、前年度の工場稼働率50%以上、主要製品の発明特許保有などを選定条件に定めた。2026年7月に予定される3回目の改定では、生産工程の技術向上、電池品質向上、電池材料技術の改善の3点が盛り込まれる。
条件を満たした企業は電池「ホワイトリスト」に掲載される。同リストには、外資企業の参入を排除する中国政府の保護政策が背景にある。中国工業情報化省は2017年から2024年までに8回にわたり、計94社の地場電池企業を選定し、産業育成を進めてきた。ホワイトリスト政策は、国家主導による淘汰の開始を意味する号砲とみなされる。
中国の車載電池市場では、CATLとBYDの2社が約7割のシェアを握る。上位10社のシェアは96%に達し、残り4%を45社が争う構図だ。中国政府は電池生産能力の増強に制限を設ける一方で、メーカーに技術革新を求める。質を重視する政策への転換は、電池メーカーの再編の始まりを示している。
一方、日本の電池メーカーは安易なキャッチアップ型投資を避ける必要がある。トヨタの電池工場建設延期の判断は合理的だ。現在の市場環境で新規投資を続けることは、供給過剰のリスクを助長する行為に等しい。今後は電池生産の地域分散と用途転換、例えば電力貯蔵システム(ESS)などへの横展開が重要になる。自動車向け“一本足打法”ではリスク分散は不十分である。
政府も、補助金による規模拡大ではなく、品質・安全・リサイクル効率を軸にした技術支援へ転換すべきだ。従来の生産支援から淘汰管理のような政策に移行する段階にある。