「残クレで車を買う人は情弱」と考える人こそ、本当の「情弱」である【リレー連載】ビーフという作法(7)
批判が映す「リテラシー格差」

本連載のタイトルは「ビーフという作法」である。「ビーフ」とはヒップホップ文化における対立や競争を指す言葉で、1984年のウェンディーズCMのキャッチコピー「Where’s the beef?」が起源である。当初は相手を挑発する意図で使われたが、ヒップホップの世界で広く定着した。本連載もその精神を受け継ぎ、モビリティ業界の諸問題や多様なアプローチについて率直に議論する場を提供する。他メディアへのリスペクトを持ちつつ、建設的な批判を通じて業界の成長と発展に寄与することを目指す。
※ ※ ※
週刊SPAは2025年11月9日、「「残クレで車を買う人は情弱」元ディーラー営業マンが明かす“残価設定型ローン”の落とし穴。銀行ローンの差額は50万円以上」(ライター・宇野源一)を配信した。
記事は、残価設定型クレジット(残クレ)を利用する消費者を「情弱(情報弱者)」と位置づけ、残クレは情弱向けの商品と断じた。さらに、情報に精通する層ほど金利負担の大きい残クレを避け、低金利の銀行ローンを選ぶ傾向にあると指摘している。
公開後には約700件のコメントが寄せられ(11月14日時点)、
「残クレの総支払額を考えずに、月々の支払額を抑えられて高級車に乗れる錯覚で、残クレを契約する人が多い」
「我慢してでも、しっかり貯金して一括支払いで購入するのがベスト」
「見栄やプライドではなく、身の丈にあった車を購入すべき」
「賢い人は残クレは使わない」
といった意見が目立った。こうした反応は、金融知識の差を示すだけでなく、
・消費者の価値観
・車の利用目的の違い
も浮き彫りにしている。通勤や家族構成、日常の移動ニーズなどを踏まえた車の選び方がある一方で、所有期間や見栄による判断に依存する層も存在する。議論は、消費者の金融判断力の格差だけでなく、ライフスタイルに応じた購買行動の多様性を示している。
記事が「情弱」という言葉を用いた背景には、消費者間の情報や経験の格差だけでなく、自動車市場や販売構造の理解度の差も影響している。この点を見落とすと、残クレ利用者を短絡的に批判する構図に陥りやすいことがわかる。