新車トラックを「鉄道輸送」 三菱ふそうが挑む日本初の試み、脱炭素だけじゃないもう1つの理由とは

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三菱ふそうトラック・バスは、鉄道輸送をできるだけ使う方針を固めた。2022年夏までに実証試験に移るという。このシフトの背景には環境配慮だけではない事情があった。

「コンテナ台車の直載せ」か「コンテナ収納」か

貨物列車のイメージ(画像:写真AC)
貨物列車のイメージ(画像:写真AC)

 一方、気になるのが運搬方式だ。大別して

1.専用貨車(車運車)
2.コンテナ車に直(じか)載せ
3.コンテナ収納

の3タイプが考えられる。結論からいえば、「1」の可能性は低く、おそらく「2」か「3」になるだろう。

 理由は「手間・ヒマ・コスト」で「2」「3」が優位なためだ。「1」の場合、新たに専用のトラック運搬貨車を製造しなければならず、少なくても数十台、もしかしたら百台単位でそろえなければならないかもしれない。

 となれば、初期費用は数百億円に達する。当然これをJR貨物が負担するはずもなく、あくまでも三菱ふそうトラック・バスが所有する私有貨車となる。しかもトラック以外積載することが困難なため、汎用(はんよう)性に欠け、目的地でトラックを降ろして工場に戻って来る貨車、いわゆる「戻り便」のほぼ全てが空荷にならざるを得ない。実にもったいない話どころか、これではCO2削減効果も半減してしまう。加えて、この30年ほどの間にJR貨物の鉄道インフラは「コンテナ輸送」重視にシフトし、競争力アップを図っている。

 このため、半世紀ほど前まで全盛だった、多種多様な貨車の大半は姿を消し、現在は石油会社などが持つタンク車やセメント会社所有の石灰岩運搬車くらいがわずかに稼働する程度だ。しかもこれらは発着地やダイヤがほぼ決まっているため、列車のやりくりには困らない。貨物駅も現在はコンテナ仕様で、かつてのように、無数の線路に枝分かれして末端に設けられたホームで終点となる駅のスタイル「頭端式貨物駅」は徐々に削減されている。

 一方、これに変わって増加しているのがE&S(発着線荷役方式)だ。E&Sとは、本線と並行する形で支線を設け、貨物列車は駅に到着するとフォークリフトがコンテナをすぐさま積み降ろし、1時間前後で列車は直進するというもの。列車がいちいちバックしたり、貨車の切り離し・付け替えを行ったりなどの煩雑さを払拭(ふっしょく)している。

 つまり、このようなコンテナ重視の鉄道インフラの中、車運車の運用はかえって難しいわけだ。

コンテナ・システムを流用したアプローチ

貨物駅のイメージ(画像:写真AC)
貨物駅のイメージ(画像:写真AC)

 その点、「2」「3」はコンテナ・システムを流用したアプローチだ。

「2」は現行のJR貨物が所有するコンテナ貨車(コキ100系。5tコンテナ5個積載可能)を台車に見立て、簡単なアタッチメントなどを配して、トラックをそのまま載せて運ぶというものだ。

 コキ100系の寸法は全長約19.6m、全幅約2.64m、床面の高さ約1mで、JR在来線の車両限界のうち高さは4.1m。一方、小型トラック(2t/3t車)の最大寸法は全長4.7m、全幅1.7m、全高2mなので、理論上3台載せることが可能である。また中型トラック(4t車)/大型トラック(10t車)、の寸法はどちらも全長12m、全幅2.5m、全高3.8mであるため、アルミ製の箱型荷台を持つバンボディータイプは無理で、荷台がフラットな平型ボディータイプを1台積むのが限界だろう。

 またこの方式の場合、コンテナ・インフラを流用するため、アタッチメントはできるだけパレット・タイプのものが望ましく、駅に配置される大型フォークリフトで積み降ろしできれば理想だ。ただしそれでも専用アタッチメントのやりくりが大変となるが、専用の車運車を新調するよりはるかに低コストとなるはずで、ある程度集め、コンテナなどにまとめて収納して送り返せばいい話だろう。

「3」は既存の31ftコンテナ内に収納するというもので、実はこれが一番簡単だ。同コンテナ(背高タイプ)は全長9.245m、全幅2.310m、全高2.360mで、小型トラックならば余裕で1台収納でき、空になったコンテナの行き先を特別に考えなくてもいい。

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