生活道路「30km制限」は本当に正しいのか?――人命優先か過剰規制か、制度の歪みを問う
2026年9月、生活道路の法定速度が60kmから30kmに引き下げられる。東京都では歩行者死亡事故の約40%が占めるなど、速度が安全に直結する現実を踏まえ、全国一律改定の背景と課題を検証する。
ゾーン30の広がり

今回の法定速度改定の最大の目的は、歩行者の保護である。警視庁の統計によると、東京都の2023年の交通死亡事故では歩行者が全体の約40%を占める。さらに65歳以上の高齢者に限ると、全体の約53%に達する。
東京都の歩行者による年間交通事故件数は、2016年から2024年までほぼ横ばいで、事故の減少にはつながっていない。歩行者の致死率は速度によって大きく異なり、30kmでは約10%、50kmを超えると80%以上に上る。このため、歩行者がより安全に道路を利用できる環境を整える狙いで、法定速度の改定が行われる。
近年は「ゾーン30」と呼ばれる住宅街や学校周辺のエリアも増えている。ここでは歩行者や自転車の安全確保のため、自動車の最高速度を30kmに制限している。こうした取り組みが全国的に広がれば、ルールの統一化にもつながると期待される。
しかし、道路環境が十分に整わないなかで速度ルールだけが先行すると、実態に合わずドライバーの負担やストレスが増す可能性がある。安全確保と交通の円滑化を両立させるバランスが重要となる。