【大討論】なぜ「都会の若者」は免許を取っても車を買わないのか?――都市部の所有率「男性:7.8%」という現実、構造転換はもう止まらないのか
1000件超の反響が示す「所有意識の転換」

当媒体が2025年11月5日に配信した「なぜ「都会の若者」は免許を取っても車を買わないのか? 地方の高級ミニバン志向と対比する、所有意識の崩壊とは」(自動車ライターの紀下ナオキ氏)という記事は大きな反響を呼び、1318件ものコメントを集めた(11月6日時点)。
記事が示すのは、都市と地方で若者のクルマに対する価値観が明確に分かれつつあるという現実である。都市部では鉄道やバスの利便性が高く、カーシェアや電動キックボードなどのシェア型サービスも普及しているため、若者は自家用車を所有せずに移動手段を確保することを合理的と考えている。免許取得は就職活動など必要に応じた行動としての意味が強く、クルマを介した体験価値や趣味的な魅力は以前ほど重視されなくなった。さらに、娯楽や交流がオンライン中心に移行したことも、クルマを媒介とした活動を減少させる要因となっている。こうした背景のなかで、メーカーはKINTOなどのサブスクリプション型サービスを通じて、所有よりも利用の価値を訴求する動きを強めている。
一方、地方では公共交通が脆弱で生活圏が広いため、クルマは日常生活に欠かせない存在である。親世代の所有環境や趣味・ステータス志向の影響もあり、高級車やSUVへの関心が若者の間でも根強く残っている。若者は経済的・心理的要因や維持費を踏まえ、合理的に購入を判断しており、地域のカーイベントやコミュニティで情報や体験を共有する文化も活発だ。
都市部と地方に共通する背景としては、若者の所得減少や生活費増加により、クルマの購入や維持が負担になっている点がある。消費行動は物理的な所有から、体験や時間効率、共感といった価値へとシフトしており、都市部ではサブスクリプションやシェア型サービスが心理的ハードルを下げる役割を果たしている。地方でも中古車や残価設定型クレジットを活用し、維持費や資産価値を意識した判断が行われている。
記事が伝えるのは、「若者のクルマ離れ」は興味や関心の欠如ではなく、所有意識そのものの変化であるということだ。都市部と地方の差異を理解し、所有型と利用型のサービスを組み合わせる戦略が求められることも明らかになっている。所得や都市計画、市場構造という複数の要素が交錯するなかで、若者の行動は社会の制度設計や環境変化に適応した結果として生まれている。