【大討論】なぜ「都会の若者」は免許を取っても車を買わないのか?――都市部の所有率「男性:7.8%」という現実、構造転換はもう止まらないのか

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都市部の若者は免許保有率53%でも、所有率はわずか13%。駐車場代は都心で月3万円超、実質賃金は10年で4%減――「買わない」選択は関心不足ではなく、都市構造と家計事情に適応した合理的な行動である。

専門家と一般人の反応

 記事には専門家や一般人から多くのコメントが寄せられた。東京大学情報学環の藤田結子准教授は、都市部の大学生は所有自体をステータスと考える傾向が弱まり、誰とどのような体験をするかが重要になっていると指摘する。SNSに投稿される自動車の写真も、マイカーを強調するより、カーシェアやレンタカーで友人と出かけた体験を共有する傾向が目立つという。米国でも2010年代から似た議論があった。背景には親の過干渉ではなく、巨額の学生ローンやUberなどのライドシェア、スマートフォンの普及がある。自動車を必要なときだけ利用する意識は共通しているという。

 自動車ジャーナリストの高根英幸氏は、都市部のクルマ離れは個別事情による多様な選択も反映していると述べる。情報過多の社会では、クルマを持たなくても生活できる層が増えているが、それは若者全体のリスク回避の傾向であり、クルマに限った話ではない。「若者のクルマ離れ」は10年以上続くが、最近の20代は30代より関心が高い場合もある。漫画やゲームの影響で、免許を取得し、自分のクルマを持ちたいと考える若者も増えているという。

 シンガポール在住のFP、花輪陽子氏は、都市部の「若者のクルマ離れ」は価値観の変化ではなく都市構造の必然だと説明する。公共交通が発達し、カーシェアなどの選択肢が豊富な状況では、高額な維持費を払って所有する合理性が薄れる。オンライン上の娯楽や交流も充実しており、移動の必要性を減らしている。今後は所有から体験への価値転換を前提に、メーカーは移動を通じた時間価値やコミュニティ形成などの魅力を提案すべきだという。

 自動車ジャーナリストの安藤眞氏は、駐車場代の高さも大きな要因として挙げる。杉並区高円寺では平均2万8000円、渋谷区猿楽町では5万1000円に達する。仕送りやアルバイトで賄うのは困難で、20代の給与でも厳しい場合が多い。通勤や通学で必須ではなく、週末も毎週使わないなら、レンタカーやカーシェアの方が合理的だという。

 一般人の声をまとめると、都市部と地方でクルマの意味や必要性が大きく異なる。都市部では駐車場代や維持費が高額で、クルマを所有する経済的余裕がない人が多い。都心では月10万~15万円の負担となることもある。週末だけしか使わない場合や駐車スペースに制約がある場合は、レンタカーやカーシェアの利用が合理的だ。通勤や買い物には電車やバスが便利で、休日も徒歩や自転車で用が足りるため、クルマは趣味や嗜好の範囲にとどまる。昔は見栄や憧れにお金をかけられたが、生活費や教育費の負担が大きく、不要な出費は控えられる傾向にある。

 一方、地方ではクルマが生活必需品であり、通勤や買い物、習い事に欠かせない。公共交通が減便・廃止される地域も多く、クルマがないと生活の自由度が大きく制限される。駐車場も整備されており、クルマを持つことが生活の質を左右する。

 近年は車両価格の高騰も影響している。軽自動車でも200万円以上、普通車は300万~400万円が相場で、税金や保険、維持費を含めるとさらに負担が大きい。昔は若者の憧れだったクルマも、今では生活に必須ではない選択肢となり、趣味や移動手段の多様化も進んでいる。

 都市部ではクルマを持たない経済的合理性が高く、地方では生活必需品としてクルマの存在価値が高い。維持費や利便性の差が、クルマを所有するかどうかの判断を左右している。

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