物流クライシスを救う「禁断の果実」 トラックの距離制“従量課金サービス”は中小運送会社の救世主か、それとも堕落を招くのか?

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Truck as a Service(TaaS)とは、運送事業者が従量課金でトラックを利用できる新しいビジネスモデルを指す。この仕組みは、運送事業者とトラックメーカーの従来の力関係を大きく変える可能性を秘めている。

トラックの従量課金革命

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

「Truck as a Service(TaaS)」を知っているだろうか。これは運送事業者がトラックを従量課金で利用するサービスである。

 料金は走行距離、利用時間、トンキロ制(貨物の重量×輸送距離で算出される値)などによって決まる。基本的には「運んだ分だけ支払う」という仕組みだ。

 日本ではまだ本格導入している事業者はない。しかし海外では、TaaSの導入が徐々に広がっている。

欧州EVトラック革命

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 JUNA(ユナ)は、トラック大手Scaniaとドイツのデジタル貨物フォワーダーsennderが2023年に設立した合弁会社である。欧州での電気自動車(EV)トラック普及拡大をミッションに掲げる。

 JUNAのTaaSでは、運送事業者はトラック購入の初期投資を不要とし、走行距離に応じた従量課金でEVトラックを利用できる。修理やメンテナンス、保険、運行管理を支援するデジタルサービスに加え、充電設備の提供やドライバー教育まで、電動化移行を包括的にサポートする。

 興味深いのは、親会社で利用運送事業者のsennderの求貨求車情報プラットフォームを通じ、JUNAの利用者が優先的に輸送案件を得られる点である。sennderは「安定した収入を得られる」とアピールしている。

 JUNAはドイツから事業を開始し、将来的には欧州全域へ拡大する計画だ。2030年までに5000台のEVトラック配備を目標に掲げる。

 他のTaaS事業者も存在する。ダイムラー傘下のCharterWayは欧州で最大級のレンタルトラック事業を展開し、金融部門と統合することでTaaSへの転換を進めている。米国のWattEVはEVトラック移行支援に特化したスタートアップで、車両と自社整備の充電インフラをセットにし、走行マイル課金で提供する。ボルボの北米事業であるVolvo on Demandは、自社EVトラックに保険やメンテナンス、充電までをパッケージ化し、メーカー主導で電動化移行を支援している。

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